逓信省型式試験合格受信機
Radio set Passed Examination by The Ministry of Posts and Telecommunications

第61号 東芝ZS-1007型 セミトランスレスオールウェーブスーパー 東京芝浦電気(株) (1948年)
No.61 Toshiba Model ZS-1007 2 Band All Wave Super Heterodyne  Tokyo Shibaura Electric Co., Ltd. (1948)

初期型

   

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TUBES: 12G-C5、12G-R6、12G-DH3、30G-P9、30G-K5
Permanent Dynamic Speaker, BC: 550-1500kc, SW: 6-18Mc

1947年、東芝が、アメリカ製の12SA7-12SK7-12SQ7-35L6-35Z5と似たシリーズのGT管を発表した。日本標準名称により、12G-C5、12G-R6、12G-DH3、30G-P9、30G-K5と名づけられた。ピン接続はアメリカ製と共通だが、内容は微妙に異なる。12SQ7相当の12G-DH3は二極管部が1個しかなく、出力管30G-P9はビーム管ではない。5極管12G-R6は、戦時中の「ソラ」そのものである。従って普通の5極管であり、12SK7のようなバリミュー管ではない。整流管30G-K5は、パイロットランプ用のタップがない。また、アメリカのオリジナルがヒータ150mAだったのに対して175mAにしないと性能が出なかったという。ピン接続はアメリカ製と同じだが、当時可能な技術でラジオ用に限定して改変された代物といえる。このような簡略版のトランスレスGT管は、後に他の大手メーカからも発売されたが、このときはアメリカ製と同じ型番を付けたため問題になった。

本機はこのGT管を使用したオールウェーブスーパーで、1948年に発売された。出力管がビーム管ではないことから100VのトランスレスではB電圧が足りず、単巻トランスを使ったセミトランスレスとなっている。オールウェーブといえば当時は1万円以上する高級品が普通だが、本機は8,500円と、高級な中波スーパーと変わらない価格であった。ただ、デザインは国民型受信機を思わせる貧弱なもので、商品性は低いと言わざるを得ず、このGT管のための試作品的なもののように思える。また、トランスを使用したことで小型化が中途半端なものになり、同時期に発表されたST型のトランスレス用真空管「ホームスーパーシリーズ」を使用したZS-1056型のほうが小さいという皮肉な結果になっている。この新型GT管は普及することなく、他社のセットに使われた例としては、ビクターのポータブル電蓄PE-1型(1950年)が唯一確認されている。

本機は真空管の入手に困ったらしく、ST管に改造されている。トランスがあるためにセットの背が高く、ST管が楽に入っている。
このことからもGT管を使った意味がまったくないセットであることがわかる。

掲載誌 『電波科学』  1947.8(真空管および試作セット)
     『無線と実験』 1948.5 、『電波日本』 Vol.45, No.3

(所蔵No.11615)

後期型

 

TUBES: 12G-C5、12G-R6、12G-DH3、30G-P9、30G-K5
Permanent Dynamic Speaker, BC: 550-1500kc, SW: 6-18Mc

木製の貧弱なキャビネットだったZS-1007型は、アルミ鋳物製の流線型のキャビネットに変更された。シャーシをそのままにキャビネットだけ変更したため、ダイヤルの位置が不自然である。

オリジナルのGT管に代わってアメリカの品種と同じタイプのGT管が使われている。この機種は、1949年頃まで生産されたことが、ポスターなどから確認されている。キャビネットの構造、材質が大幅に変更されたが、型番および合格番号は変わっていない。なお、ポスターに掲載された写真のツマミは白色である。

(所蔵No.11980)

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