ナショナル8A-1型、全波受信機 (1946-48年、松下電器産業(株)無線製造所)
広告 無線と実験1946.11/12合併号裏表紙
TUBES: 6D6-6C6-76-6D6-76-6C6-42-80
1946年8月、松下電器が戦後初めて発売した全波受信機。8球3バンドスーパーだが、6L7Gなどのスーパー専用の真空管を使わず、当時比較的入手しやすかった国民型受信機と共通の真空管だけで構成されているところに特徴がある。6D6で高周波増幅、6C6混合、76発振、6D6中間周波というのは当時良く見られるが、76の2極管接続で検波、6C6-42の2球で低周波増幅というのはかなり変わった回路である。中間周波数は当時463kcが標準であったが、1951年にこの周波数は漁業無線との妨害を避けるため国際標準の455kcに変更された。この8A-1型では後の標準となる455kcをこの時点で採用しているのが興味深い。
無線と実験に掲載された本機の試作品は戦前の6S-10型のキャビネットを流用したものであった。シャーシの固定方法、キャビネットの構造などに、同社の戦前のスーパー受信機の影響が見られる。アメリカ式のダイヤルがセット上部に斜め上を向いて配置されているキャビネットが流行する中でこのデザインは日本の住宅事情にマッチしている独特なものといえる。 前面がネットに覆われ、ダイヤルが「額縁」状になったデザインは汎用のダイヤルを収めるのに適しており、このデザインが後の「5球スーパー」の標準的な形となる。
もののない時代に苦心して設計された5極管と3極管だけの全波受信機の回路には無理があったらしく、1948年には6WC5、6ZDH3Aを採用して回路を全面的に見直し、ヨーロッパ風のキャビネットに納められた8A-2型にモデルチェンジされた。本機には兄弟機として、出力部をプッシュプルとした高級電蓄GR-802型がある。
本機は、ダイヤル目盛板の材質が悪く、たくさん使われているパイロットランプの放熱不足から目盛板が焼けて崩壊してまう欠点がある。このため、本機では後で電蓄用の市販ダイヤルに交換され、そのときにマジックアイが追加されている。この改造に合わせて76の2極管検波、6C6の低周波増幅を、6ZDH3Aの検波、増幅、76の低周波増幅に改造している。
シャーシの写真はほぼオリジナルの状態をとどめている所蔵No.11620のもの。
掲載誌:『無線と実験』 1946.3/4 (試作機)
(所蔵No.11620,11668)