日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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ミゼット型受信機
 -1931-36


解説

ラジオのデザインの変化

ミゼット受信機の回路と真空管

社会状況とラジオの普及

参考 物価の目安


ラジオ展示室

ミゼット型受信機展示室

国産ミゼット型

国産超小型・特殊型

外国製


参考文献


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ラジオのデザインの変化

当初ラジオはスピーカーと本体が別れていた。エリミネーター受信機が普及する1928年頃からスピーカーがラッパからケース入りのマグネチックスピーカーになり、1931年頃からラジオ本体と、上に載せていたスピーカーボックスを一体化したものが現れる。1932年頃までは、従来型のスピーカべったいのセットと、一体型のセットが混在している。アメリカではキャビネットの形状から砲弾型のものを"Cathedral"、角型の縦型を"Tombstone"と呼び、特に小型のセットを"Midget"と呼んだ。アメリカでは7-9球の大型のセットが多かったが、日本では3球の小型のものが多く、本体とスピーカーを一体化した受信機を一般に「ミゼット型」と呼んだ。

ミゼット型の代表的な形が、いわゆる「砲弾型」の天部が丸くなった形のものである。砲弾型はアメリカでは1929年頃に登場したが流行した時代は比較的短く、徐々に角型のデザインになっていった。日本ではラジオの歴史が5年遅れて始まったことから、アメリカでの流行が圧縮されて伝わることになった。このため、1932―33年頃の日本製ラジオのデザインは砲弾型や、俗に宮型と呼ばれる天部が神社の屋根のような形のもの、角型のものなどがほぼ同時に入ってきて混在することになった。

   
1933年に発売されていた国産ラジオの例

1930年代前半は、大恐慌後の不況下で、低価格のラジオが求められていた。放送局が各地に設置され、送信出力も大きくなったことから3球再生検波のラジオでも実用になる地域が増え、中小メーカの製品を中心に低価格のラジオが市場に現れ、普及が進んだ。これらの低価格のラジオはスピーカの位置が下がって小型にまとめられたテーブル型のセットだった。

経済力が低い当時の日本ではラジオは一家に1台だけで、大半の家庭ではテーブル型の中型ラジオが使われていた。音楽番組が少ない状況では、小数のラジオ付き電蓄を除けばコンソール受信機はほとんど存在しなかった。縦型のキャビネットが一般的になった1935年頃には、都市部ではラジオが行き渡り、東京などでは飽和状態に近づく地域もあった。このため都市の比較的富裕な中流階級に向けて、2台目需要を狙うため、ペントード検波3球式の特に小型に作られたセットが発売されるようになった。こちらのことを特に「ミゼット型」と呼ぶこともある。このような小型ラジオはアメリカではパーソナル・ユースとして個室で使われることが多かった。

  
1935年頃の小型ラジオの例

部品の小型化に伴って、特別小型に組んだセットや、AC100Vにつなぐ必要があるもののポータブルとした小型セット、電気スタンドと組み合わせた特殊な形のラジオなど、様々な形のラジオが作られるようになったが、普及することはなかった。

小型の金属シャーシの組み立てはアマチュアや設備が不十分な零細業者には技術的に難しく、従来のスピーカーが独立したエリミネーター受信機や、キャビネットはミゼット型でありながら木製シャーシを使ったセットが1930年代後半まで作られた。

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ミゼット受信機の回路と真空管

技術面を見ると、交流用真空管が普及し、三極管227によるグリッド検波、三極出力管112Aの低周波増幅1段、112B整流の3球再生式と、少し高級な247Bによる抵抗結合ペントード増幅の3球式、低周波を226-112Aのトランス結合2段とした4球再生式受信機で、マグネチック・スピーカを鳴らすものが、庶民に普及したラジオであった。低周波増幅まで226を使用したものも多い。

より上級なものは224-224-247B-112Bの高周波1段付き再生検波4球である。本来、高周波増幅にはバリミュー管の235を使うことが望ましいが、高価だったためか、大半のセットで検波管と同じ224が使われている。

より高級なモデルとして235-235-224-247B-280Bの高周波2段5球式などがあり、ダイナミック・スピーカ付きのものも現れた。高級なセットにはピックアップ端子が設けられ、蓄音器を接続して簡易型の電蓄とすることも行われた。高価で高い技術が必要なスーパーヘテロダインはほとんどなかった。

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社会状況とラジオの普及

世界恐慌以後の景気後退の中、1931年に満州事変、翌32年には上海事変が勃発し、日本は戦争の時代に入る。5・15事件などの要人暗殺事件や共産党の弾圧など、暗い時代ではあったが、そのためもあって野球や流行歌、トーキー映画などの新しい娯楽が広い支持を受けた。1931年に100万を突破したラジオ聴取者は、2年後の33年には170万を越えた。都会では高い普及率に達したが、電気すらない地域が多かった農山村での普及率は低く、全国平均では1932年にやっと10%を突破した程度である。

参考

<物価の目安> 1933年(昭和8年)
小学校教員の初任給55円
鉛筆1本3銭、タバコ(ゴールデンバット)1箱7銭
もりそば1杯10銭
対ドルレート 1ドル=4~5円

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ミゼット型受信機展示室


国産ミゼット型受信機
(メーカ別あいうえお順)


アリア(Aria)製品 ミタカ電機製作所 / ミタカ電機(株)

アリア(ARIA) 27号B型シャーシ 4球再生式 ミタカ電機製作所 1935年 シャーシ卸 7.80円

アリア R-1号 4球再生式 1936年 34.00円 (認定受信機のファイルへリンク)

アリア 44号A型 4球再生式 1936年 35.00円 (認定受信機のファイルへリンク)


エルゴー(Elgo)410号 無妨害再生受信機 4球再生式 木村電機(株) 1936年 


オリオン(Orion) / ヴィーナス(Venus)  東京電気(株)

オリオン(Orion)2号 4球受信機  東京電気(株) / 坂本製作所 1932年頃

ヴィーナス(Venus) 500号受信機 3球再生式 1932年頃


キャラバン(Caravan)製品 原口電機製作所

キャラバン(Caravan) L2型 M-30号 3球再生式受信機 原口電機製作所 1932年頃 


クラウン(Crown)製品 日本精器(株)

クラウン 412号A型 4球再生式 1936年 26.00円 (認定受信機のファイルへリンク)

クラウン 424型 高一付4球受信機 1935年 35.00円 (認定受信機のファイルへリンク)


コンサートン(Concertoner) 製品 菱美電機商会/タイガー電機

コンサートン(Concertone)B型(RR-401) 4球再生式受信機 (株)菱美電機商会 1931-32年 48.00円

コンサートン(Concertone)RM24型2号 4球再生式 タイガー電機(株) 1936年 30.00円 (認定受信機のファイルへリンク)


コンドル(Condor) 製品 坂本製作所/田辺商店

コンドル 600号 4球再生式受信機 1933年 63.00円

コンドル 700号 高一付4球受信機 1936年頃 


シーク(SHIIKU) 製品 シークラジオ

シーク 2-M型 国力弐号受信機 3球再生式 1934-35年 卸11.00円 (NEW)


シャープダイン(Sharp Dyne) / シャープ(Sharp) / エバー(Ever) 製品 早川金属工業研究所

シャープダイン 35号(初期型) 3球再生式 1931-32年 25.00円(後期型)

シャープダイン エバー37号 3球再生式 1932-33年頃

シャープダイン 45号(後期型) 4球再生式 1932-33年頃

シャープ 3型 3球再生式 1935年 卸13.70円(球なし)

シャープ 48号 高一付4球受信機 1936年 48.00円 (認定受信機のファイルへリンク)

シャープ 55号 高一付4球受信機 1936年 50.00円 (認定受信機のファイルへリンク)

シャープ 7型 3球再生式 早川金属工業研究所 1936年 24.00円

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シンガー(Singer)製品 三共電機工業(株) 

シンガー4球ミゼット型受信機 4球再生式 1932年頃

シンガー受信機 ”VICTOR”号 3球再生式 1932年頃 


高千穂製品 放電コンパニー/放電無妨害受信機製作所

高千穂 24号 (Takachiho No.24) 4球無妨害再生式受信機 放電無妨害受信機製作所 1935年ころ

高千穂 303号 (Takachiho No.303) 4球無妨害再生式受信機 放電コンパニー 1936年 (認定受信機のファイルへリンク)


テレビアン(Televian)製品 山中電機(株)

テレビアン M-235号 高周波2段5球受信機 1933-34年

テレビアン M-48号/青年団4号A 高一付4球受信機  1936-39年 (認定受信機のファイルへリンク)

テレビアン M-758号 7球スーパー受信機 1934-35年頃 112.00円


ナショナル(National) / マーツ(Marz) 製品 松下電器製作所

ナショナル 三球五号型 R-35 3球再生式 1932-33年

ナショナル 四球二号型 R-42号 4球再生式 1933年頃

マーツ R-2042型 4球再生式 1933年

ナショナル R-48号(初期型) 高一付4球受信機 1933年頃 50.00円

ナショナル国民受信機1号(新K-1型) 3球再生式 松下電器製作所 1934年 27.00円

ナショナル国民受信機2号(K-2型) 4球再生式 1935年 25.00円 (認定受信機のファイルへリンク)

ナショナル R-48型シャーシ 高一付4球受信機 1935年頃

ナショナル R-48号(ライナー型) 高一付4球受信機 1934-37年 45.00円 (個別ファイルへのリンク)

ナショナル 叡山号4号 高一付4球受信機 1935年 50.00円 (R-48号相当品)

ナショナル R-52型 高二5球受信機 1935年頃 100.00円

ナショナル R-40型 高一付4球受信機 松下電器製作所 1935年

ナショナル 国民受信機5号(K-5) 3球再生式 松下無線(株) 1936年 27.00円 (認定受信機のファイルへリンク)

ナショナル R-11型 3球再生式  松下無線(株) 1936年 26.00円

ナショナル R-10角型 3球再生式  松下無線(株) 1936年 23.00円

ナショナル R-40型シャーシ使用特注受信機 高一付4球受信機 松下無線(株) 1935年頃

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ナナオラ(Nanaola)製品 七欧無線電気商会

ナナオラ 44型 高一付4球受信機 1934年頃

ナナオラ 84型 高一付4球受信機 1936年 52.80円 (個別ファイルへリンク)

ナナオラ 95型 高二付5球受信機 1935年 卸67.50円

ナナオラ 97型 7球スーパー 1934-35年頃 155.00円

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ハドソン(NPS HUDSON)製品 湯川電機製作所

ハドソン(NPS HUDSON) 62型 高一付4球受信機 合名会社 湯川電機製作所 1932年 


ヘルメス(Hermes)製品 大阪変圧器(株) / 大阪無線(株)

ヘルメス 472型 4球再生式 大阪変圧器(株) 1933年

ヘルメス X472型 4球再生式 大阪変圧器(株) 1934年

ヘルメス No.4型 "ステージ型" 並四球受信機 大阪変圧器(株) 1935-36年 (個別ファイルへのリンク)

ヘルメス 401型 並四球受信機 大阪変圧器(株) 1936年頃

ヘルメス 31型 P3B 3球ダイナミック 大阪変圧器(株) 1936年


ミカサ(Mikasa)製品 (合)三笠ラヂオ

ミカサダイン34号 3球再生式 1932年頃

ミカサダイン43号 3球再生式 1932年頃

ミカサ 五球ミゼット型 高二5球受信機 1933年


マイティ、エキセル、ユニバーサル、ソノラダイン他 ラヂオ電気商会

ソノラダイン227型 4球再生式 1931年 30.00円

マイティミゼット(Mighty Midget) 3球再生式受信機 1933年頃

ユニバーサル(Universal) R-50型 高一付4球受信機 1935年頃


ローヤル(Royal)製品 原崎無線工業(株)

ローヤル M61型  6球スーパー受信機 原崎無線工業 1935年頃


エーブル(Able)製品 (株)廣瀬商会

エーブル ミス日本号 4球再生式 (株)廣瀬商会/ABLE RADIO PRODUCT 1934-35年 20.00円(1934), 25.00円(1935) (加筆訂正)

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その他

木台シャーシ使用4球受信機 4球再生式 メーカ不明 1935年頃 (NEW)

ピーターパン模様ラジオ 3球再生式 メーカ不明 1932年頃

ビワコ受信機/ナショナル R-150号シャシー 4球再生式 滋賀県ラヂオ商組合/松下電器製作所 1935年

ライジング S2型 3球再生式  (合)サン電池製作所 1936年頃

BK標準受信機 伊丹号 並四球 BKラヂオ普及協会 1936年頃

HY 型番不明 3球再生式 山本金属工業所 1936年頃

九四式ラヂオ「進軍号」 4球再生式 松本ラヂオ店 1934年

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国産超小型、特殊型受信機


ミッキーベビーセット(Mickey Baby Radio Set) 4球再生式 桐谷電機製作所 1935年 16.50円

ナショナル R-10改 彫刻付きラジオ 3球再生式 松下無線(株)/キャビ製作者不明 1936年頃

インターホン付4球受信機 4球再生式 メーカ不明 1935年頃

シャープダイン(Sharp Dyne) 338型 3球ポータブルラジオ 早川金属工業研究所 1934年頃

リバー(River) POCKET RADIO MODEL 500-P
 3球再生式受信機  川ラジオ製作所(KAWA RADIO WORKS) 1934年 

VENICE 超小型4球再生式受信機 4球再生式 ミカド電気研究所. 1936年頃

吉田式スタンドラジオ 電気スタンド兼用高一付4球受信機 日本電波工業研究所 1935-37年頃 65.00円

吉田式イルミネーションラジオ 電気スタンド兼用3球再生式受信機 日本電波工業研究所 1935-37年頃

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ミゼット型受信機(外国製受信機)


Philco製品 Philaderphia Storage Battery Co. / Philco Radio & Television Corp. (U.S.A.)

Philco Model 71 Code 121  7球スーパー Philco Radio & Television Corp. (U.S.A.)  1932年

Philco Model 52B Code 12?  5球スーパー Philaderphia Storage Battery Co.(U.S.A) 1932年

Philco Model 57C Junior Compact 4球2バンドスーパー Philaderphia Storage Battery Co.(U.S.A) 1933年

Philco Model89 Code123 6球2バンドスーパー Philaderphia Storage Battery Co.(U.S.A)  1934年


RCA Victor製品 RCA Victor Co., (U.S.A.)

RCA Victor Radiola "Superette" R-7 8球スーパー RCA Victor Co., (U.S.A.) 1933年

RCA Victor R-28 P 5球2バンドスーパー RCA Victor Co., (U.S.A.) 1933年

RCA Victor R-17-M トランスレス4球高一受信機 RCA Victor Co., (U.S.A.) 1934年


その他

Jackson-Bell Model 84 "PeterPan" 高一付4球 Jackson-Bell Model 84 "PeterPan" Jackson-Bell Co., (U.S.A.)  1931-32年

McMichael "Duplex Super Five" 直流用5球再生式受信機 McMichael Radio Ltd. (U.K.) 1933年 £16.16s.0d.

Majestic model 463 chassis 460 "Century six" 6球スーパー Grisbey-Grunow Co., (U.S.A.) 1933年

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第1展示室ホーム


ミゼット型受信機展示室


オリオン2号 (Orion Model2) 4球受信機 東京電気(株) / 坂本製作所 1932年頃

  

TUBES: 227-226-226-112B

サイモトロン真空管で有名な東京電気の再生式4球受信機。東京電気の製造ではなく、坂本製作所のOEMである。デザインにはアールデコの影響が見られる。スピーカと本体が一体となったごく初期の受信機である。

欧米では真空管を製造する大メーカーがラジオセットも量産し、安価で高品質のラジオが普及していくが、日本では人件費の安い中小零細メーカーとの競争に負けて大手電機メーカーはラジオセットの製造から手を引いてしまう。東京電気も例外ではなく、オリオン号受信機も短期間で市場から消え去り、同社は後に東京芝浦電気となるが、1946年まで特殊な製品を除きラジオセットを作ることはなく、主に真空管の供給のみでラジオ業界にかかわることになる。

この、大メーカーがラジオを供給しなかったことは日本のラジオ業界の近代化に大きな悪影響を与えたという。

本機はツマミが2個失われている。油汚れがひどいため黒く見えるがシャーシの色は本来シルバーである。
検波管が227から四極管の24Bに改造されている。スピーカはオリジナルではない。

(所蔵No.11512)

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ヴィーナス(Venus) 500号受信機 3球再生式 東京電気(株)  1932年頃

 

TUBES: 224 247B KX-112B (224-47B-12F), Magnetic Speaker

東京電気のラジオとしてはオリオンが良く知られているが、VENUSというブランドもあった。もちろん東京電気が作ったものではなく、他社のOEM品である。湯川電機のハドソンとデザインはよく似ているが、OEMではなさそうである。当時の一流メーカの坂本製作所が手掛けたオリオンに比べると作りが安っぽく、格下のブランドと考えられる。

裏から見ると、スピーカのネットは青色であったことがわかる。
本機のトランスはオリジナルではない。

(所蔵No. m11102) 愛知県、太田様寄贈

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コンサートン(Concertone)B型(RR-401) 4球再生式受信機 (株)菱美電機商会 1931-32年 48.00円

  

TUBES: 227-226-112A-112B, マグネチック・スピーカ (HUDSON MODEL B)

三菱電機が米ウェスチングハウス社からライセンスされた技術でタイガー電池製作所に製作させた受信機。販売は(株)菱美電機商会が行った。回路構成だけ見れば、後の「並四」と同じ回路だが、これは大型のきわめて高級なセットである。製造元のタイガー電池製作所は1936年にコンサートンラジオの販売権を取得し、タイガー電機(株)と社名変更した。三菱電機は戦後「ダイヤトーン」ブランドでスピーカを製造するまでラジオ業界から離れた。

(所蔵No.11365) 掲載誌:ラヂオの日本 1932年1月号

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キャラバン (Caravan) L2型 M-30号 3球再生式受信機 原口電機製作所 1932年頃 24.00円

  

TUBES: 227-112A-112B, マグネチック・スピーカ

1923年創業の中堅メーカ、原口電機製作所の3球式受信機。小型の砲弾型キャビネットで、この時代のラジオを代表する形態のセットである。3極管を使った再生グリッド検波、1段増幅でマグネチック・スピーカを駆動する標準的な受信機である。”キャラバン”という商標の由来を示すようにダイヤルには砂漠の隊商とピラミッドが描かれている。

本機は真空管が失われている。また、シャーシの腐食が激しい。

(所蔵No.11006)

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シーク 2-M型 国力弐号受信機 3球再生式 1935年 卸11.00円

 

TUBES: 227-247B KX-112A (27A 47B 12F), Magnetic Speaker

中堅メーカのミゼット型受信機。廉価版として用意された「国力号」は1号から5号まであり、卸値で11円から13円80銭という安さだった。11円の安価なモデルはラージ真空管、12円を超えるモデルにはKO真空管が使われ、真空管のグレードで価格を分けていたようである。キャビネットのデザインは、この2号はテレビアンのコピー、他のモデルはナショナルのコピー品である。1935年にはすでに角型のキャビネットの製品が多く発売されていた。このような丸形のデザインの製品との切り替わり時期といえる。

(所蔵No. m11210) 愛知県、太田様寄贈

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シンガー4球ミゼット型受信機 4球再生式 1932年頃

 

TUBES: : 227-226-112A-112B, マグネチック・スピーカ

金属キャビネットのエリミネータ受信機の大量生産に乗り出した三共電機が、流行し始めていたスピーカ一体型のミゼット型セットを金属キャビネットで作ったもの。メンテナンスは底板を外すことで可能となる。強度の関係か背面に開けられた穴は小さく、真空管の交換は容易にできるがスピーカの脱着は困難である。複雑な形状のキャビネットの製造には相当な工数と金型などのイニシャルがかかったと思われる。デザインを兼ねて各部にリブを入れて強度を確保しようとしているが、薄い鉄板で作られたキャビネットの音響特性はお世辞にも褒められたものではなかっただろう。経営が悪化していた同社の最後期の失敗作といえる。このほかにも金属製のミゼット型ラジオは例がないわけではないが、成功したといえるものはない。

本機のツマミはオリジナルではなかったため、オリジナルと思われるものを当館で取り付けた。
また、スピーカのネットとプラスの止めねじはオリジナルではない。

(所蔵No.S11030) 柴山勉コレクション

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シンガー(Singer)受信機 ”VICTOR”号 3球再生式 (三共電機製作所 1932年頃)

  

TUBES: 227-112A-112B, マグネチック・スピーカ

金属キャビネットの時代に有名になったシンガーのミゼット型受信機。VICTORの名が入っているが蓄音機とは何の関係もない。ちなみに日本ビクター蓄音機はこの頃からラジオ製造に乗り出している。同社は経営上の問題から1934年に経営権が譲渡され、日本精器として「クラウン」ブランドでラジオを生産することになる。

本機は正面右上のツキ板がはがれている。

(所蔵No.11399)

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ハドソン(NPS HUDSON) 62型 高一付4球受信機 合名会社 湯川電機製作所 1932年

 

TUBES: 224 227 112A 112B (57S 56 12A 12FK) , Magnetic Speaker, PU端子,

1930年代前半を代表するメーカの高一受信機。同社のデザインは正面に大型のダイヤルとツマミ2個を配し、天部に緩やかなカーブを持った特徴を持っている。感度を確保できる高一受信機の場合、音量調整を備えるのが普通だが、このセットにはない。並四と同じように再生調整のみである。デザイン上の理由と、高一受信機が必要になる電界強度の低い地域では音量調整は不要ということだろうか。

大阪朝日新聞社主催のラジオコンテストに一等当選したモデルで、正面にプレートが取り付けられている。

本機は、近年修復されているため、使用可能である。真空管が、より高性能な57S、56に交換されていることと、放送局の大出力化によって、東京都内では短いアンテナで十分実用になる。音量調整がないと少し不便なほどである。電源スイッチ、スピーカはオリジナルではない。ツマミは当館で似た形のものを取り付けた。

掲載誌:ラヂオの日本 1932年11月号広告

(所蔵No.11A041)

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ミカサダイン34号 3球再生式 (合)三笠ラヂオ 1932年頃

 

TUBES: 224 112A KX-112B, Magnetic Speaker

神戸にあった三笠ラジオの3球セット。早川(シャープ)のOEMである。砲弾型でも角型でもない、中途半端なデザインだが、ミゼット型の初期にはこのようなデザインが多くみられる。

本機は、当時最新のUY-224を使った3球式だったが、電源トランスを交換して56-26B-12A-12Fの4球に改造されている。真空管一つ分の場所を確保するために低周波トランスをどかして電源トランスの上に括り付けている。スピーカと真空管が失われている。
本機の中央のツマミはオリジナルではないが、シャープのものなので、修理の際に交換したものかもしれない。

(所蔵No.11A098) 

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ミカサダイン43号 3球再生式 (合)三笠ラヂオ 1932年頃

 

TUBES: 227 112A 112B (56 3Y-P1 12F), Magnetic Speaker

神戸にあった三笠ラジオの3球セット。早川(シャープ)のOEMである。砲弾型の典型的なミゼット型である。

本機は、出力管をペントードに改造している。本機のツマミはオリジナルでない可能性が高い。

(委託No.S11105: 柴山 勉コレクション) 

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ミカサ (Mikasa) 五球ミゼット型 高二5球受信機 (合)三笠ラヂオ 1933年

  

TUBES: 235-235-224-247B-280B, マグネチック・スピーカ

関西系中堅メーカの高級受信機。初期の「ペントードセット」である。

本機のスピーカ、ツマミはオリジナルではない。また、整流管が失われている。

(所蔵No.11005)

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テレビアン M-235号 (Televian Model M-235) 高周波2段5球ダイナミック受信機 山中電機(株) 1933-34年 94.00円

 

   
(左)広告:ラヂオの日本1934.1 (右)スーパーに改造されたシャーシ、右下の銘板は東京電気の特許許諾証

TUBES: 235-235-224-247-280 , Electro-dynamic Speaker

エリミネーター受信機の普及とともに大手メーカとなった山中電機の高級受信機。高周波2段5球でフィールド型ダイナミックを駆動する。幅42cm、奥行き28cm、高さ52cmの巨大な砲弾型キャビネットである。本来のM-235型は広告のような小型のダイヤルであったが、このセットには1937年頃のエアプレーンダイヤルが付いている。広告の写真とこのセットを比較すると、ツマミのピッチが違うことがわかる。M-235の後期型のモデルはエアプレーンダイヤルに変更されたのかもしれない。ただ、ダイヤルにTELEVIANの文字はない。

本機は戦後に3WC5-57S-3ZDH3A-3YP1-80の2.5V系真空管を使った5球スーパーに改造されている。
ツマミは、このときに交換されたと思われるものが付いていたが、現在はオリジナルと形状が似たものに交換した。
スピーカはバッフル板ごと失われ、サランネットが破損している。セット内部を見ると、ネットが元は青い糸で模様が刺繍されたものであることがわかる。

(所蔵No.11672)

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テレビアン M-758号 7球スーパー受信機 1935年頃 112.00円

 

TUBES: 58 57 56/227 58 57 247 280, Electr-dynamic Speaker(テレビアン1号),

山中の最高級クラスのスーパー受信機。高周波1段中間周波1段の7球である。5極管をコンバータとしているため、3極管の発振部を別に設けている。第二検波はプレート検波で、AVCはない。この機種のシャーシは元々電蓄用として開発されたもので、銘板にもPhono-Radio と表記されている。本機はシャーシのみのA-758(83.00円)も販売されていた。スピーカはワルツ59号である。本来はトランスのカバーに着"Waltz"のマークがない仕様になっている。

本機は近年修理された形跡がある。この時出力管が2A5に改造されている。スピーカは塗り直されていると思われる。
また、1934年の資料とはツマミの形が異なっている。

(所蔵No.11A179)

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ナナオラ44型 (Nanaola No.44) 高周波1段4球受信機 (七欧無線電気商会 1934年頃)

 
 

TUBES: 224-224-247B-112B, マグネチック・スピーカ

44型はナナオラの中級受信機で高周波増幅なしの受信機より一回り大きい。デザインは砲弾型キャビネットの典型的なもの。砲弾型キャビネットは古典ラジオらしいデザインで今でも人気が高いが、この時代の全てのキャビネットがこの形だったわけではなく、山型や角型のキャビネットが混在していた。

本機の前面パネルには京城(現在のソウル)放送局のプレートが取り付けられている。財団法人京城放送局は日本放送協会の母体となる東京(JOAK)、大阪(JOBK)、名古屋(JOCK)に次いで1926年11月に4番目の放送局として開局した。JODKのコールサインは日本の敗戦とともに消滅し、今に至るまで割り当てられていない。

(所蔵No.11349)

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ナナオラ 95型 高二付5球受信機 1933-35年 110.00円(1933年)

 

TUBES: 58 58 57 247/2A5 280, Electro-dynamic Speaker (Flower Vox)

ナナオラの高級ラジオ。ペントード出力の高二受信機である。発売当初は247であったが、1934年頃に新型出力管2A5を採用し、その後長く作られる高二受信機の標準的な回路を採用している。この変更の際に価格が下げられた。最高級機種であるスーパーの97型とほぼ同サイズの製品だが、価格は7割程度に抑えられている。安価なモデルと共通の部品を使えることが低価格にできた理由と思われる。

本機は真空管なしの未使用品と思われるが、キャビネットに95型の銘板がありながらナナオラ795型シャーシの試験表及び付属品の袋が添付されている。どのような経緯でこの形のセットになったかは不明である。また、本機のスピーカは後に交換されたと思わる。オリジナルではない。

(所蔵No. m11100)  愛知県、太田様寄贈

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ナナオラ 97型 7球スーパー 1934-35年頃 158.00円

 

TUBES: 58 58 56 58 2A6 2A5 280, Electro-dynamic Speaker

ナナオラの最高級ラジオ。高周波2段、低周波2段の96型の後継機種として用意されたもの。日本では少数派のスーパーである。最新の2A6を採用してAVC付の本格的なスーパーとしている。IFは175kcである。アメリカのカテドラル型ラジオとほぼ同サイズの大型キャビネットである。1935年のセットとしてはデザインが古い。カテドラル型デザインを採用したものとしては最も後のものと思われる。97型は1937年頃にこのキャビネットのダイヤル部分だけを型番を変えずにエアプレーンダイヤルに変更された。その後1939年頃に角型のキャビネットに変更され、型番が97Aとなった。さらに1940年頃にデザインを変更してN-250型となった。

本機は戦後、大幅に改造されたため内部はスピーカとシャーシ、シールドケースを除いてオリジナルの部品がほとんど残っていない。

(所蔵No.S11032) 柴山勉コレクション

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ナショナル(National) 三球五号型 R-35 3球再生式 松下電器製作所 1932-33年

 

TUBES: UY-227 UY-247B KX-112B (56 47B 12F), Magnetic Speaker

松下が1号機を発売した同じ年に第二弾として発売した最初のミゼット型ラジオ。最新のペントード(五極管)247Bを採用した3球式である。三極管を使った3球式ミゼットの三球3号型R-33の上位機種である。使用部品には1号機と共通のものが多い。初期の交流式ラジオらしく、東京電気の特許許諾証が付けられている。パネルのデザインは松下のMをデザインしたものか。この形のほうが新しいように見えるが、実際には屋根が丸いデザインのR-33と同時に発表された。このデザインは人気がなかったのか、1933年半ばにはカテドラル型のR-39にモデルチェンジされた。4球式もR-46「当選号」にモデルチェンジされ、このデザインは短命に終わった。

本機は真空管とスピーカが戦後交換されている。また47Bは失われている。
本機のツマミは、資料から初期の新ナショナル受信機と同じもののレプリカを取り付けた。
本機のトランスは台座を除いて大阪変圧器(ヘルメス)のものに交換されている。

(所蔵No.11A221)

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ナショナル(National) 四球二号型 R-42号 4球再生式 松下電器製作所 1933年頃

 

TUBES: 227 226 112A 112B, Magnetic Speaker,

松下の初期の4球受再生式信機。安価で良くできたセットだったが、まだ松下製ラジオの知名度が低く、それほど大量には出回らなかった。このキャビネットには、松下の検査証が付いているが、一般的に知られているものとはデザインが異なる。このデザインで3球式のR-33(3球3号型)も確認されている。

(所蔵No.11A059)

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マーツ R-2042型 4球再生式 松下電器製作所 1933年

 



 

TUBES: 227 226 112A 112B, Magnetic Speaker,

松下は、初代の製品が売れずにラジオ部門の経営危機に対応するため、新製品を開発した、1933年はじめに普及型の安価なシャーシを開発し、7円50銭という驚異的な低価格で発売した(この価格は3球式(R-1031)のものと思われる)。普及型シャーシには「ナショナル」ブランドを毀損することを恐れてサブブランドの「マーツ」が使われた。この機種は、4球のR-1041型マーツシャーシをキャビネットに入れて完成品として販売したもの。シャーシには、最初の新ナショナル受信機の部品が多く使われている。これは、売れずに残っていた在庫部品を流用したものと思われる。

松下は1933年4月に事業部制を採用し、ラジオ事業は第1事業部としたが、ラジオ事業の立て直しを図るため、1933年7月、第1事業部を本店から第7工場に移し、生産と営業を一貫して行える体制を構築した。この時発売された新製品は、市場の要求を取り入れ、工場と連携して低コストを実現していた。

画期的な低価格製品として発売されたマーツシャーシであったが、『松下電器月報』を見ると、事業部が工場に移った直後の8月に発行された第31号(商品一覧には「第七工場」とある)には掲載されているが、10月の第33号(「第一事業部」と表記されている)には、マーツ受信機は掲載されているが、シャーシはナショナル製品のみが残っている。「マーツシャーシ」は短命に終わったようである。

このシリーズには、ナショナルのシャーシを入れた「ナショナル4球普及型」R-1400型(R-400型)が存在した。デザインはマーツと同じだが、台座部分が周囲を取り巻いているか、前後に角材を付けただけかの違いがある。『月報』では、角材を付けただけの簡素なデザインの写真が「ナショナル4球普及型」となっているが、この現物とは異なる。カタログの写真が入れ替わっている可能性がある。

本機の中央のツマミはオリジナルではない。

(所蔵No.11A318)

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ナショナル(National) R-48号(初期型) 高一付4球受信機 松下電器製作所  1933年頃 

 TUBES: 224-224-247B-112B, マグネチック・スピーカ

1933年に発売された四極管検波、抵抗結合五極管増幅方式の高一付4球受信機。5極管(ペントード)を使う抵抗結合式出力回路は当時最新のもので、音の良いラジオとしてもてはやされた。シャーシの構造や使用部品には、松下最初のラジオ受信機である、いわゆる「当選号」と共通する要素が見られる。受信周波数帯は後に決定した550-1500kcよりも狭く、550-1400kcである。
R-48型のもっとも初期型のキャビネットである。この形は最初の1年ほどだけで、すぐにライナー型に変更された。

(所蔵No.11A047) (所蔵No.m11195) 愛知県 太田様寄贈

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ナショナル(National) R-48型シャーシ 高一付4球受信機 松下電器製作所  1934年頃

 

TUBES: 224-224-247B-112B, マグネチック・スピーカ

1934年に発売された四極管検波、抵抗結合五極管増幅方式の高一付4球受信機。5極管(ペントード)を使う抵抗結合式出力回路は当時最新のもので、音の良いラジオとしてもてはやされた。シャーシの構造や使用部品には、松下最初のラジオ受信機である、いわゆる「当選号」と共通する要素が見られる。受信周波数帯は後に決定した550-1500kcよりも狭く、550-1400kcである。

R-48型にはシャーシのみで販売するものも設定されていた。キャビネットは専門メーカから安価なコピー品が出回っていた。松下製の完成品は45円であったが、シャーシの卸値は真空管なしで17円50銭、これに卸2円程度のキャビネット、同1円50線程度のスピーカ、3円30銭程度の真空管キット(二流メーカ品)を組み合わせると、定価の半額程度で組み立てることができた。シャーシ以外は安物部品でもナショナルのマークが入ったセットがかなり安く売れるというわけである。これが購買力の低い当時の日本市場の現実であった。松下自身もこのような市場を理解して、シャーシや部品を供給していたのである。このセットもR-48型シャーシを市販のキャビネットに収めたものと思われる。

本機は、長野県松本市で使われていたもの。
中央のつまみがオリジナルでない。真空管が57S-57S-3YP1-12Fに交換されていて、戦後まで使われたことがわかる。

(所蔵No.m11001)

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ナショナル(National) 叡山号4号 高一付4球受信機 松下電器製作所 1935年 50.00円

 

TUBES: 24B-24B-47B-12B, マグネチック・スピーカ

四極管検波、抵抗結合五極管増幅方式の高一付4球受信機。ベストセラーとなったR-48型と同じもので、京都府内の月賦販売加盟店向けに八回払いの月賦販売用として用意されたもの。「叡山号」には、1号から6号まであり、当時の松下の代表的モデルが用意されていた。他の地域の月賦販売加盟店向けに「剣山号」も用意されていた。

キャビネット、シャーシは銘板以外R-48と変わるところはなく、良質の部品で丈夫に作られている。
シャーシの構造や使用部品には、松下最初のラジオ受信機である、いわゆる「当選号」と共通する要素が見られる。

(所蔵No.11667)

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ナショナル R-52型 高二5球受信機 松下電器製作所 1935年頃 100.00円

 

TUBES: 235 235 24B 47 80 , 8" Electro-dynamic Speaker (National D-80)

松下の高周波2段付き高級機。ベストセラーとなったR-48と同じデザインのライナー型だが、こちらはR-48より二回りほど大きく、8インチダイナミックを大型五極管(ペントード)47で駆動するものである。かなりサイズが違うが、うまくデザインのバランスを取って違和感なくまとめられている。価格はR-48のちょうど2倍である。R-52は、シャーシとしても発売され、電蓄にも使われた。日本のラジオではペントードといっても小型の247Bと小型整流管80Bを使うことが多く、ラジオに8インチダイナミックと47-80を採用したものは珍しい。高周波部にはR-48同様、四極管が使われている。この機種には、全く同じデザインで真空管を新型の5極管に変更(58 58 57 2A5 80)した姉妹機R-53がある。R-48同様、エアプレーンダイヤルを採用したデザインに変更されて長く生産された。

本機の出力管は2A5に改造されている。効率が低く評判が悪かった47を2A5に改造してある例は多い。

(所蔵No.11A178)

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アリア(ARIA) 27号B型シャーシ 4球再生式受信機 ミタカ電機製作所 1935年 シャーシ卸7.80円

 

TUBES: 27A-26B-26B-12B, マグネチック・スピーカ

 関東系の大手メーカ、ミタカ電機製作所の並四球受信機。放送協会認定15017号を取得した27型シャーシ(227-226-112A-112B)をモデルチェンジしたもの。シャーシのみで販売されたものを市販のキャビネットに収めて組み立てたもの。完成品で販売されていたアリア27B型セットもドン真空管付で卸16円という安価なセットだった。二流メーカの真空管、スピーカ、キャビネットを組み合わせると13円程度の原価で並四受信機が組み立てられた。

本機は、低周波トランス、アンテナコイルが交換され、27Aが失われている。

(所蔵No.11321)

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シャープダイン(Sharp Dyne) 35型 3球再生式受信機 早川金属工業研究所 1931-32年 25.00円(後期型)

 

TUBES: 227 112A 112B (56-12A-12F), Magnetic Speaker,

早川が最初に発売したミゼット型ラジオ。幅26㎝と、非常に小型にまとめている。スピーカを内蔵したラジオが出始めた時代のセットである。同じデザインで4球式の45型(227-226-112A-112B)も同時に発売された。この頃、松下電器はやっとラジオの生産を始めたところだった。鉱石ラジオの時代からラジオに取り組んでいた早川は、すでに最新の量産性に優れた安価なセットを発売できるまでになっていた。35型はキャビネットのデザインが変更されて放送協会認定を取得し、1933年頃まで生産された。また、このセットは、高島屋から「高島屋ダイン」の名称で発売されたことでも知られる。

本機の中央のツマミはオリジナルでない。左の大き目のツマミが中央に付き、右の小さいツマミが左右に付くのが正しい。
キャビネットの塗装が褪色している。

(所蔵No.11A061) 掲載誌:ラヂオの日本 1932年1月号

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シャープダイン(Sharp Dyne) エバー(EVER)37号 3球再生式 早川金属工業研究所 1932-33年 22.00円

 

TUBES: 224 247B 112B , Magnetic Speaker,

きわめて小型にまとめられた35号は少し大きく背の高いデザインに改められた。当時流行したペントード247Bを使った3球式である。この機種はシャープではなく、エバーブランドである。エバーについてはシャープに対する第二ブランドとして使われていた名称である。同じ回路構成でシャープブランドの34号が27円なのに対し、エバーはデザインをシンプルにした廉価版となっている。銘板はエバーだが、ダイヤルの表記はSHARPである。エバーの名称については、戦後早川電機工業のシャープに対して早川商事のブランドとして使われていたことが判明している。

(所蔵No.m11060) 戸井田コレクション

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シャープダイン(Sharp Dyne) 45型(後期型) 4球再生式受信機 早川金属工業研究所 19332-33年頃

 

TUBES: 227 226 226 112B (27A 26B 26B 112B), Magnetic Speaker,

シャープダインの4球受信機。初期型にも3球の35型に対し4球の45型が存在した。これは型番は同じ45型だが、キャビネットのデザインが変更されるとともに出力管が112Aから226に変更され、コストダウンが図られた後期型である。上級機種の45型には35型にはないピックアップ端子が付けられている。

本機はスピーカと裏蓋が失われている。ツマミは当館でレプリカを取り付けた。
シャーシの状態が悪かったため、手持ちの同等と思われるシャーシに載せ替えている。したがって、細部がオリジナルと異なる可能性がある。

(所蔵No.11924)

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シャープ 3型 3球再生式 早川金属工業研究所 1935年 卸13.70円(球なし)

 

 
シャーシの構造が異なるもの2種類

TUBES: 224 247B KX-112B, Magnetic Speaker

シャープの小型ラジオ。当時のラインナップで最も安価な機種であった。この機種は厚みが5インチ(12cm)しかない。1930年代の国産のテーブル型ラジオの中では最も薄型ではないだろうか。この機種にはシャーシが2種類確認されている。コイルがバスケット型で背面に出っ張りがないものと、コイルがソレノイド型で背面にトランスのコイルが突き出ているものである。片方の銘板が失われているため、どちらが初期型かは不明である。抵抗結合のために低周波トランスがないのでシャーシを小型にできたのだが、無理に薄型にしたために電源トランスが中央に来ている。このため、検波管と出力管の間のハイインピーダンスの配線が長くなり、トランスに接近するという影響を受けやすい配置になってしまった。

(所蔵No.11A315) (コイルがソレノイドのモデルはNo.S11125 柴山 勉コレクション)

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高千穂 24号 (Takachiho No.24) 放電無妨害受信機製作所 1935年 35.00円

  

TUBES: 24B-26B-12A-12B マグネチック・スピーカ

これは当時流行した「無妨害再生受信機」のひとつ。メーカの「放電コンパニー」は、銘板の表示を「放電無妨害受信機製作所」に変更するほど力を入れていた。無妨害再生受信機は、高周波増幅を持たない再生式受信機による再生妨害を防止する回路としたもの。日本放送協会は無妨害再生受信機の普及を目指して回路の懸賞募集を行った。この機種は、昭和9年度の懸賞に当選したNE式の回路を採用したもの。

昭和10年以降、逓信省特許105982号による回路が採用され、大々的に宣伝された。しかし、無妨害再生受信機は、基本的に再生を制限するもので感度が低かった。このため商品性が低く、短期間で流行が終わった。

 本機は、近年、全面的に修理されているため、本来の無妨害再生受信機ではなくなっていて、オリジナルが大きく損なわれている。本機のツマミ、サランネットはオリジナルではない。本来はグリル中央に3本の縦桟が付いていたが、失われている。

(所蔵No.11840)

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ヘルメス 472型 4球再生式 大阪変圧器(株) 1933年

 

TUBES: 227 226 112A KX-112B, Magnetic Speaker

大阪のトランスメーカ、大阪変圧器がラジオに進出した初期の製品。同社は自社で供給できない部品を一流メーカから調達して組み立てる方法を取った。真空管は東京電気(マツダ)、キャビネットは日本楽器(現ヤマハ)から調達され、それぞれの会社名を記した銘板が裏蓋に取り付けられている。真空管を除くすべての部品を自社で生産して量産効果を求めた松下や早川とは違うやり方で、小規模ながら短期間で高品質のラジオを生産し、高級品メーカとしての地位を確立することになる。この製品も、当時大声が出ることを売りにした製品が多い中で、高音質を訴求していた。同社の設計監督者には、無線電話に早くから取り組み、後にJARL会長となる梶井謙一氏が就いていた。

当時、247Bを採用した上級モデル「ペントード4球」が発売されたため、この3極管を使用したモデルは「普通4球」と呼ばれた。この言葉は「普四」と略されるようになった。後の「並四」の語源である。

本機のスピーカはオリジナルではない。ツマミが1個失われている。

(所蔵No.11A130)

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ヘルメス X472型 4球再生式 大阪変圧器(株) 1934年

 

TUBES: 227 226 112A KX-112B, Magnetic Speaker (Center)

大阪変圧器の初期の472型をマイナーチェンジしたモデル。キャビネットのデザインがシンプルなものに変更され、シャーシも簡素化されている。この所蔵品には「別製」という銘板が付けられている。電灯会社の試験票(会社名は不明)には、9.8.2の日付とともに「販売物品」の捺印があり、容量に記載がない。電灯会社自身が販売したものと思われる。電灯会社を大きな販売先としていた同社ならではである。

(所蔵No.m11090) 神奈川県茅ケ崎市 石坂様寄贈

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ソノラダイン227型 4球再生式 (株)ラヂオ電気商会 1931年 30.00円 

 


 トランスの銘板

TUBES: 227 226 112A KX-112A, Magnetic Speaker (Waltz)

ごく初期のミゼット型ラジオ。赤門ラジオで知られる本郷のラジオ電気商会が製造販売したもの。シャーシは木製で、そのレイアウトはスピーカが分かれたエリミネータ受信機そのもので、キャビネットのデザインも本体とスピーカを一つにまとめただけの過渡的な形である。同社では同時にスピーカが分かれた従来型の製品もクリヤダインとして発売していた。

本機のツマミはオリジナルではない。補修してあるが、キャビネットとシャーシに虫食いがみられる。

掲載誌:無線と実験昭和6年8月号

(所蔵No.S11082) 柴山 勉コレクション

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マイティミゼット(Mighty Midget) 3球再生式受信機 (株)ラヂオ電気商会 1933年頃 卸12.50円

 

TUBES: 227-112A-112B, Magnetic Speaker

ラジオ草創期から「赤門」ブランドで知られる東京、本郷のラジオ電気商会が発売した小型の3球ミゼット受信機。当時の普及型のセットの半額近い低価格で発売された。この機種の標準型のキャビネットはスピーカのグリルが"M"の模様になっている。このセットの場合、"OK"と読める。この機種の発売された1932(昭和7)年に設立された日本放送協会京都放送局(JOOK)と関係があるかもしれない。

(所蔵No.S11064) 柴山 勉コレクション

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ユニバーサル R-50型 (Universal type R-50)  高周波1段4球受信機 (株)ラヂオ電気商会 1935年頃

  

ラジオ草創期から「赤門」ブランドで知られる東京、本郷のラジオ電気商会の4球受信機。224-224-247B-112Bの高周波1段受信機。高一受信機にしては小型にまとめられている。本機のキャビネットは汎用品と思われる。デザインは縦型ラジオの典型である。ラジオ電気商会のラジオセットとしては最後期のもの。

(所蔵No.11513)

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ローヤル(Royal) M61型 6球スーパー受信機 (原崎無線工業 1935年頃)

 

TUBES: 27A-58-58-2A6-247B-280B

スーパーに強い高級機メーカーとして知られる原崎無線工業の6球スーパー受信機。27A-58-58-2A6-247B-280B の配列で5極管スクリーングリッド注入式コンバータ回路を採用している。大型でかなり高級なシャーシでありながらオリジナルのスピーカーはマグネチックである。当時は電蓄などにも普及型としてマグネチックスピーカを使用した製品があった。

本機はスピーカーがダイナミックに交換され、シャーシは6D6-6L7G-37A-6D6-6B7-42-80 の6.3V管の高一付スーパーに大幅に改造されているが、IFTなどのオリジナルの部品はかろうじて残されている。

(所蔵No.11541)

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コンドル(CONDOR) 600号 4球再生式受信機  坂本製作所/田辺商店 1933年 63.00円

 

TUBES: 224-227-247B-112B (224 56 3Y-P1 12F), Magnetic Speaker,

1930年代を代表するメーカ、コンドルの初期のミゼット型受信機。当時最新の5極管(ペントード)247Bを採用している。
砲弾型でも角型でもない中間的なデザインだが、ミゼット型のデザインが確立する前の機種である。

本機は、近年修理されている。スピーカーコード、電源スイッチはオリジナルではない。

(所蔵No.11A111)

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コンドル(Condor) 700号 高周波1段4球受信機 (坂本製作所 1936年頃)

 

TUBES: 24B-24B-47B-12B, Magnetic Speaker

大正時代からの長い歴史を持つコンドルの高一受信機。
アールデコの影響を受けたシンプルなデザインが特徴的。

本機のスピーカはオリジナルではない。真空管は3YP1-12Fになっている。

(所蔵No.11429)

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ホーム


シャープ 7型 3球再生式 早川金属工業研究所 1936年 24.00円

 

TUBES: 24B(57S) 47B 12B(12F), Magnetic Speaker

早川(現シャープ)が発売した超小型ラジオ。高さ20cm程度と、真空管が外せるぎりぎりのサイズまで小型化されている。グリッドキャップのために背が高い24Bはソケットを落とし込んで納めている。この時代、シャープは都会向けの小型ラジオに注力していたようである。販売力が松下ほどではないハンデを補うために購買力の高い都会に集中したと考えられる。
この機種にはデザイン違いの8型が存在した。また、ブランドが「シャープダイン」から「シャープ」へ切り替わる時期である。

(所蔵No.11A124)

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ナショナル(National)国民受信機1号 新K-1型 3球再生式受信機 松下電器製作所 1934年 27.00円(K-1型)

 

TUBES: 24B 47B(3Y-P1) 12B(12F), Magnetic Speaker

松下電器が後にベストセラーとなる中級高一受信機R-48型を発売した翌年に「国民受信機」(まさにNational Radio である)シリーズの1号機として発売した廉価版の小型受信機。当選号以来の松下製受信機の価格帯の約半額の定価で発売され、市場に流通していた粗製濫造の安物と競争できる価格であったため好評を持って迎えられ、4球式の国民受信機2号 K-2型と合わせて発売後2ヶ月で1万台を越える台数を生産し、ヒット作となった。(1)(2)

K-1型は5極管を使った「3ペン」受信機で、「並四」のK-2型より高い定価が付けられていた。新K-1型は、マイナーチェンジされたものだが、外観はほとんど同じである。

本機のツマミは1個失われていたため、当館でレプリカを取り付けた。
また、真空管も失われていたため、当館で取り付けた。電源トランスが焼損したらしく、電力会社の検査票と思われるラベルが焼けた跡がある。

(所蔵No.11908)

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ナショナル(National) R-40型 高一付4球受信機 松下電器製作所 1935年 65.00円

 

松下の小型ダイナミック・セット。4極管UY-24Bが一般的だった時代に新型管UZ-58をいち早く採用した。58-58-47-80Bがオリジナルの配列。小型ラジオにUY-47を使用した例は珍しい。小型だが高級機である。このセットは、京都地域の月賦販売特約店では「叡山号5号」として、8回払い68.00円で販売された。

本機は6WC5 - 58 - 57 - 2A5 - 80 の5球スーパーに改造されている。

(所蔵No.11207)

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ナショナル(National) R-11型 3球再生式受信機  松下無線(株) 1936年頃 26.00円

TUBES: 24B 47B 12B, Magnetic Speaker

松下が「マーツライト」と称した熱硬化性プラスチック製キャビネットを使った超小型ラジオ。アメリカで「ベークライト」の商品名で人気を呼んでいたプラスチックラジオを国産化した意欲作。アメリカではすでにトランスレスが普及しいたため、このサイズでも高一付4球を組み込めたが、大きなトランスが必要な日本製では3球式が限度だった。当然重くなるので破損しやすく、良い状態で残っているものは少ない。量産性に優れるはずだがアメリカのように大量生産で劇的に価格が下がるということはなく、木製キャビネットの類似機種よりも価格は高かった。このため、初期のプラスチックキャビネットはすぐに市場から姿を消した。

(所蔵No.11A052)

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ナショナル(National) R-10角型 3球再生式  松下無線(株) 1936年 23.00円

 

TUBES: 24B 47B 12B, Magnetic Speaker

松下の小型セット。直線的なデザインにユニークな形のツマミなど、当時最先端のモダンデザインの影響が見て取れる。プラスチックキャビネットのR-11型と同時に発売されていたが、本来量産性に優れていて安くなるはずのプラスチック製ラジオより安価であった。R-10型には、曲線を基調とした「丸形」のデザインが異なるモデルがあった。

(所蔵No.S11029) (柴山 勉コレクション)

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ナショナル R-40型シャーシ使用特注受信機 高一付4球受信機 松下無線(株) 1936年頃



TUBES: 58 57 2A5 80, Electro-dynamic Speaker (Lift Model D-500)

松下製の小型電蓄用4球シャーシを搭載した横長の大型ラジオ。幅50cmある。シャーシとスピーカが横に並んだデザインは、1937年以降、エアプレーンダイヤルが一般的になってから増えてくるが、海外では英国などに1930年代前半からモダンデザインの一つとして存在した。日本では市販品にこのような小窓型ダイヤルと横長キャビネットの組み合わせはほとんどないが、雑誌などに紹介されていた海外製モダンデザインに惹かれた顧客がキャビネットを特注して作らせたものと思われる。同じR-40型でも小型ミゼット型のR-40とは全く異なる、少し後の時代のシャーシである。

中央のツマミは戦後のもの、他の2個も戦時中のものでオリジナルではない。

(所蔵No. 11A211)

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ヘルメス 401型 並四球受信機 大阪変圧器(株) 1936-37年

 

TUBES: 27A-26B-12A-12B, 8" Magnetic Speaker

高級機で知られる大阪変圧器の小型ミゼットセット。上質のキャビネットは日本楽器(現ヤマハ)製である。大型の横行ダイヤルを採用したデザインが珍しい。ただ、並四ラジオの低い選択度では実用上の意味は低かったと思われる。

掲載紙:「我国初めてのスライド式バニヤダイヤル受信機ヘルメスが発売」『ラヂオ公論 第222号』 (ラヂオ画報社 1936年11月12日)

(所蔵No.m11081) 大阪市、富士屋電気商会/長尾忍様寄贈

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ヘルメス 31型 P3B 3球ダイナミック 大阪変圧器(株) 1936年

 

TUBES: 24B 47B 12B, 5" Electro-dynamic Speaker

高級機で知られる大阪変圧器の小型ミゼットセット。凝ったデザインのキャビネットは日本楽器(現ヤマハ)製である。5インチのフィールド型ダイナミックが使われ、スピーカーグリルはベニスのゴンドラのレリーフが真鍮細工で施されている。小型ラジオでダイナミックスピーカを使ったものは珍しく、上級モデルである。整流管が12Bなので、耐圧には苦労しただろう。小型スピーカを駆動できるぎりぎりまでフィールドを節約しているのではないだろうか。

当時の発表写真(1)ではゴンドラの背景がかなり濃い色に写っている。現在残っているものは金色に見えるが、実際には違う色であった可能性もある。

(1) 「ヘルメス 詩情と芸術味横溢のP3Bゴンドラ型 待望のダイナ超ミゼット」 『ラヂオ公論 第208号』 (ラヂオ画報社 1936年7月3日)

(所蔵No.s10009) (柴山 勉コレクション)

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エルゴー(Ergo) 410号 無妨害再生受信機 (並四球) 木村電機(株) 1936年

 

TUBES: 24B-26B-12A-12B

中小メーカの並四受信機。当時流行した「無妨害再生受信機」のひとつ。無妨害再生受信機は、高周波増幅を持たない再生式受信機による再生妨害を防止する回路としたもので、逓信省特許を使ったものは大々的に宣伝された。しかし、無妨害再生受信機は、基本的に再生を制限するもので感度が低かった。このため商品性が低く、短期間で流行が終わった。

(所蔵No.11283)

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BK標準受信機 伊丹号 並四球受信機 BKラヂオ普及協会 1936年頃 

 

TUBES: 27A 26B 12A 12B, Magnetic Speaker,

この時代のラジオとしては珍しい横行ダイヤルを採用した小型受信機。当時、各放送局でラジオの斡旋販売を行っていた。このセットは、JOBK(大阪中央放送局)の斡旋品のような名称になっているが、銘板にある発売元の「BKラヂオ普及協会」のところに、「登録商標」とある。

ラジオの斡旋販売に熱心だったのは仙台、広島などの地方局が多く、開局後聴取者の伸びが悪かった名古屋を除けば、東京、大阪はラジオ業者も多く、普及も進んでいたので斡旋販売の実例は少ない。このセットは、放送局の推奨品のように見せかけた商品と思われる。

(所蔵No.11985)

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HY 型番不明  3球再生式受信機 山本金属工業所 1936年頃

 

無名メーカーが作った27A-26B-12A-12B の並四受信機。ミゼット型受信機の典型的なスタイルである。放送協会認定のマグネチックスピーカ(Star 50号、放21053、山本由吉、1936.4.20認定)を使用。スピーカの認定を取得した「山本由吉」が、セットメーカの山本金属工業所と関係があるかは不明。当時はラジオとして放送協会認定を受けるとコストが高くなってしまうため、トランスやスピーカなどの主要部品だけ認定品を使用し、「認定品使用受信機」と称して販売するものが多かった。

本機は電源コード、スイッチ、電源トランス、真空管が戦後交換されている。
また、キャビネット下部のツキ板が失われている。全体に保存状態は悪い。

(所蔵No.11592)

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ライジング S2型 3球再生式受信機   (合)サン電池製作所 1936年頃

 

 24B-47B-12B の、4極管検波、5極管増幅の3球受信機。ミゼット型受信機の典型的なスタイルである。4極管、5極管が発売されてから抵抗結合の3球受信機が作られるようになった。トランス結合の並四に比べて感度は低いが小型でスマートな形にできるため都会向けの受信機として発売されたようである。

(所蔵No.11593)

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九四式ラヂオ「進軍号」 4球再生式 松本ラヂオ店 1934年

 

TUBES: 27A(56) 26B 12A 12F, Magnetic Speaker,

東京のラジオ商が製造したと思われるミゼット型受信機。平均的なスタイルの4球再生式である。満州事変後ではあるが、まだ日中戦争は始まっていない時代のセットだが、軍用品を思わせる「九四式」、非常時を感じさせる「進軍」という名称を使用しているところが興味深い。このような名称のラジオは日中戦争以後の1937年以降、多く表れるが、これはそのごく初期のものである。

(所蔵No.11A329)

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ミゼット型受信機 (自作その他)


木台シャーシ使用4球受信機 4球再生式 メーカ不明 1935年頃

 

TUBES: 227 226 112A KX-112B (56 226 12A 12F), Magnetic Speaker (放21024)

木製のシャーシを使用したミゼット型受信機。当時、ラジオ部品および完成品のシャーシは発売されていたが、自作用の金属シャーシは、穴なし、穴あけ済みともに用意されていなかった。このため、手作りするにはシャーシから製作する必要があったためシャーシから手作りする必要があったため、アマチュアは薄い板で木箱を作ってシャーシとした。認定品のスピーカなど、比較的良質の部品が使われているが、スパイダ―コイルなど、古い部品がみられる。

キャビネットはナショナルR-48型(ライナー型)のコピー品である。並四用のため、本物とはサイズが異なる。このベストセラー製品のデザインは多くの模倣品を生んだが、これもその一つである。

本機のツマミは失われていたため、当時の典型的なデザインのレプリカを取り付けた。

(所蔵No.11A373)

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ピーターパン模様ラジオ 3球再生式 メーカ不明 1933年頃

 

TUBES: 27A 12A 12B, Magnetic Speaker

シャープダイン35号とほぼ同サイズの小型のミゼット型ラジオ。グリルの「ピーターパン」の模様が特徴的だが、これは米Jackson-Bell Model 84 "Peter Pan" のコピーである。本物は人物の顔が右を向いているが、これは逆に左を向いている。コウモリをモチーフにしたユニークなダイヤルが付いているが、これはジャクソンベルのコピーではなく、日本のメーカの製品である。

本機には戦後のオリジナルではないツマミが付いていたので、当館で時代の合うものを取り付けた。
電源コードは近年交換されたもの。

(所蔵No.m11080) 大阪市、富士屋電気商会/長尾忍様寄贈

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ビワコ受信機/ナショナル R-150号シャシー 4球再生式 滋賀県ラヂオ商業組合/松下電器製作所 1935年

 

TUBES: 27A 26B 26B 12B(12F), Magnetic Speaker (National)

滋賀県のラジオ商組合が、松下のシャーシを独自のキャビネットに組み込んで販売したセット。ラジオ商組合が特売などのために作ったPB商品の一つだが、一流品のシャーシを使っていて、他の安物とは一線を画している。

本機は、キャビネットのみ発見された。同時代のナショナルシャシーとスピーカを組み込み、失われていた真空管とツマミも取り付けた。シャフト、ダイヤルの穴及びシャーシ止めねじの穴まで一致するので、この形状のシャーシが入っていたことは間違いないが、型番まで合っているかは不明である。キャビネット裏側上部に付けられた、裏蓋を支える桟は後から付けられたもの。

(所蔵No.11A250)

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超小型受信機、特殊受信機


エーブル ミス日本号 4球再生式 (株)廣瀬商会/ABLE RADIO PRODUCT 1934-35年 20.00円(1934), 25.00円(1934-35)

 

 
背面の銘板(左)と、底面の説明書き(右)

TUBES: 227 226 226 KX-112B (27A 26B 26B 12B), Magnetic Speaker

廣瀬商会が「国際ラヂオ」と銘打って発売した小型ラジオ。金属プレスのキャビネットに標準的な4球再生式受信機を納めている。同社の広告(4)には、このデザインに対して
 「極めて明朗な意匠と、我光輝ある、国旗を象徴す本邦ラヂオの名誉と、誇りと、年来保持せる自信と努力の結晶として、断然茲に発表するの光栄を有するものであります」
とあるが、このデザインは米RCAのR-17-M型のコピーである。コピー商品に対してこれだけの大言壮語を吐き、NIPPON号と命名して国際市場に打って出るとまで宣言するのだから、あきれるばかりだが、当時のデザインのコピーに対する意識が透けて見えてくる。説明書きに英文が併記してあるあたりは、本気で輸出を考えていたのかもしれない。オリジナルにはないパイロットランプと側面の電源スイッチを付けたために、整備性が悪くなっている。ナス型管を前提として設計した関係か、オリジナルより少し大きくなっている。1934年の広告にはNIPPON号とだけあるが、本体には、同社のブランドであるABLEのマークと、ABLE RADIO PRODUCTの表示がある。翌1935年の広告には「エーブル ミス日本号」となっている。価格は当初20円と発表されたが、すぐに25円に改められた。

本機は、左側のツマミとパイロットランプのレンズが失われている。スピーカの布はオリジナルのRCAと同じく、日の丸を象徴する赤色だったと思われる。

掲載紙:『ラヂオ時代』 1934年7月15日号 ラヂオ時代社
参考文献:広告 『ラヂオ年鑑 昭和9年版』 日本放送出版協会

(所蔵No.11A353)

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ミッキーベビーセット(Mickey Baby Radio Set) 並四球受信機 桐谷電機製作所 1935年 16.50円

  

 
桐谷卸商報1935.5より 

TUBES: 27A-26B 12A-12F, Magnetic Speaker

金属製キャビネットに収められた小型の並四球受信機。ブランドは「Mickey」であり、パネルの図案は明らかにミッキーマウスであるが、もちろん盗用したものである。実物のキャラクター部には、金色の彩色の跡が残っている。広告の写真から判断すると、何色かで着色されていたようである。中身は普通の小型マグネチック・スピーカを使った並四受信機で、かなり安価である。

本物のミッキーマウスラジオは、米エマーソン社の411型 (1933-36)が有名だが、こちらは飯田商会の手で1934年に輸入されていた。しかし、小型ラジオながら125円と、国産の電蓄が買えるほどの高価な品物だった(アメリカでの定価は$25.00)。本物の広告を次に示す。ちなみにこちらは正式なディズニーのライセンスを受けて生産されている。中身は高周波一段付4球でダイナミックスピーカを駆動する。


イートランラヂオ卸商報 1934.6 飯田商会ラジオ部より

この411型とニセモノを比べると、スピーカーグリルの絵柄も含めて、かなりデザインが異なっていることがわかる。ニセモノが金属製なのに対して、本物は木製である。デザインも本物のほうがはるかに凝っていて、正面だけでなく、すべての面にキャタクターの彫刻がある。また、本物のパネルがほぼ正方形であるのに対して、ニセモノは縦に長い形状になっている。これはスピーカのサイズの関係で全く同じ寸法にできなかったものと思われる。

 昭和初期にはディズニーのアニメ映画は日本で公開されていて、ディズニーのキャラクターは日本ではそれなりの知名度はあった。そうでなければニセモノを作る意味はないわけだが、このニセモノ、実は正式に意匠登録されている。下図に、意匠登録公報の正面図を示す。


意匠登録第66008号「ミッキーマウス模様ラジオ受信機」 公報より

1934年12月に鈴木八郎なる人物により「ミッキーマウス模様ラヂオ受信機」として出願され、ぶじ1935年4月に意匠登録66008号として登録されている(3)。上記の広告の日付から、1934年半ばには本物が日本にもたらされている。ニセモノの意匠登録は本物を確認してからデザインして出願したと考えてもおかしくない。新興国であった日本ではラジオの分野でディズニーによる商標登録がなされていなかったのかもしれない。それにしても、明らかに外国の有名なキャラクターを使用したものとはっきりわかる意匠を正式に登録してしまうということは現代では考えられない。このような製品は、新興国時代の日本の知財に関するレベルをよく表している。

アメリカのエマーソン411型は、子供向けのラジオとして商品化されたものである。では、この日本製のニセモノはどのような意図で作られたものだったのだろうか。当時、子供にラジオを買い与えるという家庭はほとんどなかったとみてよいだろう。他の小型ミゼット同様都会のアパートなどで使うことを意図した製品とみるのが自然である。商報の広告の欄外には「ミッキーベビーセット発売以来売行殺到」とあるが、残存数から見てそれほど売れたとは思えない。もっとも金属製で敵国のキャラクターを使った製品ということで戦時中に金属供出されてしまった可能性はある。

「ミッキーマウス」”Mickey Mouse"は、The Walt Disney Company の登録商標です。

(所蔵No.11A046)

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ナショナル R-10改 彫刻付きラジオ 3球再生式 松下無線(株)/キャビ製作者不明 1937年頃

 

TUBES: 24B 47B 12B (UZ-57 3Y-P1 KX-12F), Magnetic Speaker

一家だんらんの様子を描いた彫刻がパネルに施された珍しい形のラジオ。中身はナショナルのミゼットラジオR-10型である。キャビネットには量産品と同じ銘板と特許番号一覧のラベルが貼ってある。銘板に検査印はあるが、製造番号は入っていない。ラベルは松下のものだがキャビネットは樹種や構造が明らかに松下製とは異なる。松下はシャーシのみ供給したようだが、このモデルのシャーシはカタログでシャーシが販売されてはいない。特別に個別の契約で供給した物だろう。

彫刻は一体物ではなく、壁と人物がいる椅子の部分および床が別ピースでできている。表面からツマミが見えないが、操作はパネル全体を開いて行う。今は失われているが、スピーカの部分の窓にはカーテンを思わせる布があった。いかにもアマチュアの手作りのように見えるラジオだが、このラジオは、全く同じものがもう1台確認されている。このことから、ある程度の数が生産されたと考えられる。

簡単に操作できなくなっている点とデザインから見て、子供向けの品物と考えられるが、当時、アメリカのように子供用に個人がラジオを用意するということは日本では考えられない。このラジオの使用目的は明らかではないが、幼児教育の現場などで、私立学校などが使用したものと考えることはできないだろうか。

本機はツマミ1個とスピーカのネットが失われている。

(所蔵No.11A095)

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インターホン付4球受信機 並四球受信機 メーカ不明 1935年頃

 


インターホン切り替えスイッチ部

TUBES: 56(27A) 226(26B) 12A-12B, BC

ミゼット受信機にインターホン機能を付けた特殊なラジオ。パネルには切り替えスイッチ(双方(ラジオ)-当方ラジオ(ベル)-呼出-通話)があり、背面には通常のアンテナとピックアップ端子の他に外部スピーカ端子と、もう1組のターミナルがある。
別室に供えられたスピーカとの間でベル呼出、ラジオの共同聴取ができるようになっているものと思われるが、実際にはインターホンスイッチはダミーとなっていて、配線は取り去られているので、機能の詳細は不明である。

当時、中流家庭でも「女中さん」を置くことが珍しくなく、居間と女中部屋の間に呼出用のベルがついていることもあった。このラジオは、女中部屋でラジオを聴けるようにすると同時に呼出機能をつけたものではないだろうか。

(所蔵No.11A022)

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シャープダイン(Sharp Dyne) 338型 3球ポータブルラジオ 早川金属工業研究所 1934年頃

 
スピーカが付いている正面(左)、と操作部と放熱口がある背面(右)

  
  底部蓋の内側に電源コード掛けが付いている

TUBES: 224 247B 112B (24S 3Y-P1 12F), Magnetic Speaker

シャープのポータブルラジオ、交流式で、電池では使えない。リバー・ポケットラジオと同様、正面はスピーカグリルのみで、操作部とアンテナ端子が背面に付く特異なデザインである。アメリカ製品には良く見られるが、真空管が逆様に納められている。当時のソケットの品質を考えると、大胆な設計である。天部にハンドルがあり、電源コードは底部に収納できる。重量は3.9kgで、十分携帯可能である。

当時、小型ラジオが多数発売され、中にはキャリングケースやバッグが用意されて、ポータブルをうたう製品もあった。旅先の宿で使うような用途を考えていたのだろうか。スポーツ中継などを楽しんだのかもしれない。。

(所蔵No.11917)

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リバー(River) POCKET RADIO MODEL 500-P 3球再生式受信機 川ラジオ製作所(KAWA RADIO WORKS) 1934年 25.00円

  

 

TUBES: 24B-12A-12B

戦前の日本製真空管式ラジオとしては最も小型化されたもののひとつ。わずか幅14cm、高さ21cm、奥行10cmの木製キャビネットに交流式3球受信機を4インチの小型マグネチックとともに収納している。このセットは、1933年に発売された米国のKadette Model F "Junior"(外部リンク)を手本としていると思われる。ただし、Kadette Junior は、6F7と12A7を使用した2球トランスレス受信機である。ベークライトキャビネットで高さが15cmである。オリジナルに習ってPOCKET RADIOと呼んでいるが、実際にポケットに入れるには少し大きい。小型にするため、当時一般的だったトランス結合ではなく、抵抗結合が採用されている。

操作部は全て背面にあり、ピックアップ端子も備えている。電源スイッチは電源コードに取り付けられた中継スイッチである。当時の日本の技術でトランス式の3球受信機をこのサイズのキャビネットに収めたのは驚異的である。銘板は全て英語表記となっている。また、銘板の電源電圧の部分を、後から刻印するようになっている。このことから、英語表記は舶来に見せかけるための伊達ではなく、輸出を考えていたのではないかと思われる。

掲載誌:無線と実験1935.3

(所蔵No.11823)

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VENICE 超小型4球再生式受信機 並四球受信機  ミカド電気研究所 1936年頃

 

 

20cm角に入る超小型の4球受信機。27A-26B-26B-12Fの4球で5インチのマグネチックを駆動する。戦前の国産品としては最も小型のラジオと思われる。このセットからはメーカーは特定できない。表記のブランドとメーカ名は、ほかのコレクションにある同型機の銘板で確認したもの。複数社にOEM供給された可能性があるため、正確さには欠ける。構造上キャビネットとシャーシが分離できない。部品が大きいままで無理に小型化しているため整備性は悪い。

(所蔵No.11745)

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吉田式スタンドラジオ 電気スタンド兼用高一付4球受信機 日本電波工業研究所 1935-37年頃 65.00

 
     スタンドラジオ2種類、基本的なデザインは同じだが、真空管のケースや、細かい模様が異なる
 
  蓋の裏に付けられたスピーカとソケット(左)、蓋が付けられる受け口(右)
 

 TUBES: 24B 24B 47B 12B (57S 56 56 12F に改造), Magnetic Speaker

高一付4球受信機を電気スタンドに組み込んだ特殊なラジオ。筺体は真鍮の薄い板を半田付けで組み立てた手のかかったものである。スタンドの傘を支える柱の中に真空管が入り、かさの裏側にスピーカのコーンが下向きに取り付けられ、ベークライト製のフレームにマグネットと電球のソケットが取り付けられている。本体と傘はコネクタで接合される。電球とスピーカはピンの太さが変えられていて、誤接続を防ぐようになっている。

ラジオの回路は23cm角、高さ5cmの台座の中に全て収められている。金属製の底板とシャーシ上部には紙が貼られ、絶縁している。スペースが無いため、高一でありながら2連バリコンを使うことができず、薄型の単連型セミコンを並べて取付けている。このため、同調操作は一昔前の2段同調型となり、使いにくい。また、同調ツマミの反対側には音量調整があるが、再生調整は無い。調整だけでなく、再生回路そのものが無い。これに加えて狭い金属キャビネットにコイルを押し込んでいるためQが下がり、感度は悪い。音質は到底望めない構造だが、背面にはアンテナ端子と並んでピックアップ端子も付けられている。

このデザインの吉田式スタンドラジオには、いくつかのバリエーションがあり、真空管のカバーが円筒形のもののほうが一般的である。また、木製の台座が附属するが、固定されていないため、失われていることが多い。このセットは、戦時中にいったん生産中止されるが、戦後ほとんど同じ形で復活し、真空管や回路を改良しながら1950年代まで生産された。

(所蔵No.11879)
(委託No.S11027) 柴山 勉コレクション
(所蔵No.m11091) 愛知県、太田様寄贈

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吉田式イルミネーションラジオ 電気スタンド兼用3球再生式受信機 日本電波工業研究所 1935-37年頃

  
 ラジオ本体(左)と、傘(オリジナルでない)を仮に取り付けた状態



 内部、近年修理されている。

TUBES: 24B 47B 12B, Magnetic Speaker

3球再生式受信機を電気スタンドに組み込んだ特殊なラジオ。筺体は真鍮の薄い板を半田付けで組み立てた手のかかったものである。円筒形の台座にラジオが組み込まれ、中央の球体の中にスピーカが前向きに取り付けられている。狭い金属キャビネットの影響でコイルのQが下がり、感度は悪い。スタンドとラジオは独立してON/OFFできる。

本機の傘はオリジナルではない。

(所蔵No,S11028) 柴山 勉コレクション

(所蔵No. m11115) 愛知県、太田様寄贈

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ミゼット型受信機 (外国製受信機)


Jackson-Bell Model 84 "PeterPan" 高一付4球 Jackson-Bell Co., (U.S.A.)  1931-32年

 

TUBES: 24 24 47 80, Electro-dynamic Speaker (Lansing),

「ピーターパン」の愛称で知られるアメリカ製の小型ラジオ。高さ33cmの小型のセットだが、高周波1段の4球、出力管は47でダイナミック・スピーカを駆動する。この機種はGilfillan Bros. 社がOEMで製造したもの。このキャビネットは日本で多くの模造品が作られた。ただし、日本製はほとんどが3球再生式である。

本機は当時日本に輸入されたもので、三友商会の銘板が付けられている。日本製の部品で修理されているが、ビニール線やアンテナの陸軍端子は最近修理されたものである。

(所蔵No. m11101) 愛知県、太田様寄贈

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McMichael "Duplex Super Five" 直流用5球再生式受信機 McMichael Radio Ltd. England 1933年 £16.16s.0d.

 


Amplion Convette Model M2V-B エリミネータユニット
(Input: AC200-250V, Output: DC2V 1A max, DC100-130V 20mA max)

TUBES: PM12 PM2HL 210HL 215P PM2B (Mullard/Cossor),
A: DC2V, B: DC130V, C: DC9V, BC: 250-550m, LW: 900-1900m

英国マックミッチェル社製の電池式受信機。電池式であっても、ポータブルではない。英国では、電気より先に照明、熱源用のガスのインフラが整備された関係で、電気の普及は日本より遅れていた。このため、1930年代になっても家庭用の電池式受信機が多く作られていた。電池をセット下部に内蔵するためにスピーカが下、シャーシが上というレイアウトになっている。
日本やアメリカではあまり見られないレイアウトだが、英国ではしばしば見られる形態である。ループアンテナを内蔵しているため、キャビネット底部に回転台が装備され、指向性を調整できる。この収蔵品では、バッテリーのサイズに合わせた電源ユニットが取り付けられている。製品名にSuperと入っているが、スーパーヘテロダインではなく、"Duplex"(レフレックス)を採用した再生式である。

電源部の配線はオリジナルではない。また、パネル左側の切り替えツマミが失われている。

(所蔵No.11964)

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Philco Model 71 Code 121 7球スーパー Philco Radio & Television Corp. (U.S.A.) 1932年

 

TUBES: 44 36 44 37 44 42 80

Cathedral型セットで一世を風靡した米フィルコ社の2世代目のデザインのセット。大型の7球スーパーで、フィールド型ダイナミックを駆動する。真空管は当時最新の6.3V球を使用している。1932年にフィルコ社は、アメリカ初の全電子式テレビの免許を受けた。これを受けて、同社は、主に製造と本社機能を持つPhiladerphia Storage Battery Co. と、主に販売を担当するPhilco Radio & Television Corp.に分けられた。このため、この時代のフィルコ受信機には、2つの社名表記が見られる。

(所蔵No.11905)

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Philco Model 52B Code 12? 5球スーパー Philaderphia Storage Battery Co.(U.S.A)  1932年

 

TUBES: 24 - 35 - 24 - 47 - 80

アメリカの大手メーカ、フィルコのカテドラル型5球スーパー。中間周波数は175kcである。出力管として大型のペントード、47が使われているが、スピーカは5インチと小型のフィールド型ダイナミックである。アメリカ製のセットとしてはすでに旧式となった2.5V管を使用している。不況下のアメリカでは安価なラジオが求められた。この機種は従来のカテドラル型のモデルに比べてスピーカとキャビネットを一回り小さくした廉価版である。

本機はシャーシの錆がひどい。また、キャビネットは再塗装されている。

(所蔵No.11810)

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Philco Model 57C Junior Compact 4球2バンドスーパー Philaderphia Storage Battery Co.(U.S.A) 1933年 $15

 

TUBES: 77-77-42-80, Electro-dynamic Speaker

アメリカの大手メーカー、フィルコの小型受信機。6.3V球を使ったトランス式4球スーパー。小型のフィールド型ダイナミックを駆動する。通常の中波のほかに、1.5-3.2Mcの短波帯を受信できる。このバンドは警察無線、初期のテレビ音声が割り当てられていた。このセットは同社で初めてULの安全認証を受けたものという。幅30cm、奥行き13cmの小さなキャビネットに、日本では大型のラジオにしか使われない42-80を使ったスーパーの回路が納められているため、放熱には十分な配慮がなされている。

日本ではこの時代にこのサイズでは、並四受信機さえ作ることはできなかった。このセットは、ライバルのエマーソンの小型受信機ががTRFだったのに対し、安価な小型受信機ながらスーパーだったためにベストセラーとなり、1年で11万台以上生産された。

(所蔵No.11715)

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Philco Model 89 Code123 6球2バンドスーパー Philaderphia Storage Battery Co.(U.S.A) 1934年

 

TUBES: 44 - 77 - 44 - 75 - 42 - 80, Electro-dynamic Speaker

アメリカの代表的ブランド、フィルコのミゼット型受信機。カテドラル型と呼ばれるタイプの受信機の代表的なもの。同社のセットの中では比較的小型のモデルである。同じようなサイズの国産品は、せいぜい高一程度の内容だが、これは6球スーパーである。シャーシの構造や使用部品のレベルは日本製品より数年先を行っている。真空管は6.3V管を使用し、フィールド型ダイナミックを駆動する。通常の中波のほかに、1.5-3.2Mcの短波帯を受信できる。このバンドは警察無線、初期のテレビ音声が割り当てられていた。Model 89 には、多くのバリエーションがあり、Code123に限ってもキャビネットのデザインが数種類ある。

本機はサランネットが破損し、スピーカがオリジナルでない。

(所蔵No.11660)

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Majestic model 463 chassis 460 "Century six" 6球スーパー Grisbey-Grunow Co., (U.S.A.) 1933年

 

TUBES: 58 2A7 58 55 2A5 80, Electro-dynamic Speaker (Jensen)

大胆な"waterfall"柄のクロームメッキのグリルが特徴的な、アール・デコ・スタイルのキャビネットを採用したセット。1933年にこの製品のメーカの地元シカゴで開催された博覧会Worlds Fair "Century of Progress" を記念して発売された。回路はごく平凡な高一付6球スーパーである。このキャビネットのデザインは日本のメーカ数社にコピーされた。

(所蔵No.119345

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RCA Victor Radiola "Superette" R-7 8球スーパー RCA Victor Co., (U.S.A.) 1931年

 

TUBES: 235 227 224 235 227 245 245 280 (RCA), 10" Electro-dynamic Speaker, AC105-125V 60c/s, 96W

米国RCAの中波のみのモデルとしては上級クラスのセット。高周波増幅付の8球スーパーで電蓄並みの245プッシュで10インチダイナミックを駆動する。IFは175kcである。5極管やスーパー用真空管ができる前の製品のため、回路規模が大きい。

アメリカのラジオは回路規模がどんどん大きくなり、スピーカも大型化した。8球スーパーと10インチスピーカを無理やり縦型のキャビネットに押し込んだ結果、シャーシの上には電源トランスとコンデンサ、真空管しか置くことができなくなった。巨大なバリコンとIFT、コイル類をシャーシの中に収めるためにシャーシの高さが真空管より高くなった。IFTと端子盤で真空管のソケットは見えず、整備性は極めて悪い。デザインも幅35㎝に対してシャーシの高さと大口径のスピーカで48㎝もの高さになり、ひょろ長いバランスの悪いものになった。収まりきらなくなったことでラジオのデザインが横型になっていったと思わせる製品である。

参考:http://wd4eui.com/RCA_R7A_Superette.html

参考(レストアの過程):http://mcclellans.com/RCARadiolaR-7Superette.htm

(所蔵No.11A355)

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RCA Victor R-28 P 5球2バンドスーパー RCA Victor Co., (U.S.A.) 1933年

 

TUBES: 58 2A7 57 2A5 80, 5"P.D.SP. 

RCAのCathedral型セットの中では最も小型のセット。高周波1段付で中間周波増幅を持たない5球スーパーである。型番の末尾"P"は、ポリスバンドを示すもので、1.4-2.8Mcの短波が聴けるようになっている。ベースモデルR-28に付加された機能で、右端の不自然な位置についているつまみがバンドスイッチである。警察無線傍受可能な家庭用受信機など、当時の日本では考えられないものであっただろう。このセットが作られた1933年は、日本ビクター蓄音機がラジオの製造に乗り出した年でもある。本機の回路や、シャーシ構造、小型のケース入りIFTなどの部品の技術は、親会社のRCAから日本ビクターに供与され、同社の製品に生かされた。

(所蔵No.11934)

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RCA Victor R-17-M トランスレス4球高一受信機 RCA Victor Co., (U.S.A.) 1932-34年

  

TUBES: 39/44 - 36 - 38 - 37(76)

金属キャビネットに収められたトランスレス4球高一受信機。小型のマグネチック(インピーダンス875Ω)を駆動する。整流管は3極管37の2極管接続である。6.3V管を使っているため、ヒータ電圧の足りない分は、大型の抵抗器(初期型は電源コード内蔵の抵抗線)で消費している。小型のバリコン、ハイ・インピーダンス型のコイルなど、日本の製品とは技術レベルが違うことがわかる。

まったく同じキャビネットでGeneral Electric のModel BXもある。日本ではこのデザインをコピーした製品を廣瀬商会が1934年に発売した。こちらは227-226-112A-112Bのトランス式再生検波で、このデザインを「国旗を象徴した」デザインと称し、NIPPON号と名付けた。NIPPON号のほうは、サイズが若干大きくなっている。

(所蔵No.11468)

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参考文献

(1)『松下電器月報 昭和9年6月号』 1934.6 (松下電器製作所 1934年)
(2)山口 誠 「放送」をつくる「第三組織」-松下電器製作所と「耳」の開発- 『メディア史研究Vol.20』 (メディア史研究会 2006年)
(3)小野寺 務 「ラジオのデザインについて その1」 『AWC会報 1999 No.2』 (アンティック・ワイヤレス・クラブ 1999年)
(4)廣瀬商会広告 『ラヂオ年鑑 昭和9年版』 (日本放送協会 1934年)

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