日本ラジオ博物館

Japan Radio Museum

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真空管式ポータブルラジオの離陸
-ラジオ輸出の始まり-
The Growth of Japanese Portable Reciever
1950-1958


CONTENTS

解説編

国産ポータブルの離陸 1950-54

特殊用途向けポータブルラジオ 1954-56

ポータブルラジオの増産と輸出の本格化 1955-58

真空管からトランジスタへ 1957-60

ポータブルラジオ展示室 (更新)

参考文献

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解説編

国産ポータブルの離陸
1950-54

当初フィラメント電流を増やさないと性能が出なかったため試作番号で量産試作されていた国産の電池用mT管は、改良が進んでアメリカ規格と同じものが、日本電気の手により1950年7月から量産が開始された。品番はアメリカと同じになり、当初用意された品種は1R5,1T4,1U5,3S4の4種類であった。当初は歩留まりも低く、普通のスーパー用ST管の2倍以上もする高価なものであった。1952年頃にはマツダおよびロダンからも発売され、ロダンの製品は比較的安価だった。

アメリカ製の放出品を使って始まった国産ポータブルラジオの生産は、真空管や小型部品の国産化により、少しずつ伸びていった。セットのほうは、専門の中小メーカーから製品が発売されていた。中島、シルバー、アルペン、エンパイヤ、東海といったブランドが有名である。デザインは大半がアメリカ製品のコピーである。初期にはプラスチック成型の技術がなかったために金属か木製のキャビネットのものが多かった。

1949年から電池式受信機協議会が活動を開始し、真空管や電池の改良に取り組んできたが、1950年の朝鮮戦争による特需が発生し、国産の交直両用受信機が朝鮮半島に輸出されることになった。これが日本製ポータブルラジオ輸出の始まりである(1)

しかし、国内ではポータブルラジオがすぐに一般に普及することはなかった。この大きな理由は電池のコストである。真空管式ポータブルにはA, Bの2種類の電池が必要である。フィラメント用のA電池には単一型乾電池を1個、B電池には67.5Vの積層乾電池を使うことが多かった。

 
ポータブル用電池、左からBL-M145、BL-145、UM-1、UM-2

B電池は当時500円近い値段であった。1952年の公務員の初任給が7,650円である。B電池の寿命は断続的に使って1~3ヶ月というところであった。現代の感覚だと2万円のノートパソコンのバッテリーを毎月交換するという感じだろうか。この点で日本ではポータブルラジオはかなりの「贅沢品」であった。当時の文学作品などでは、乗用車と並んで「道楽息子」のシンボルのように描かれている。

それでも1954年後半からは大手メーカが参入し、生産が本格化した。このためポータブルの生産が目立って増加し、月産1万台程度で、全生産台数の1割近いシェアとなった。この年の後半からは松下など大手メーカが参入し、生産が本格化した。量産化に伴って低価格化し、6千円台の製品(シルバーBX-100型、6,800円)も現れるようになった。

しかし、所得の高いアメリカでは電池の割高感はなく、広く普及していた。50年代前半にはループアンテナを使っていたためにずんぐりした形だったのがバーアンテナが実用化されて薄型になった。

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特殊用途向けポータブルラジオ
1954-56

1954年頃から、僻地の無電灯地域での教育用に、直流式ラジオが用意された。NHK、電波技術協会などとメーカが協力して電池式のホームラジオが開発され、NHKや自治体の補助により僻地の学校などに配備された。また、防災用の大容量電池を備えるポータブルラジオが開発され、一部の自治体に配備された。しかし、すぐにトランジスターラジオが普及したため、多く使われることはなかった。

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ポータブルラジオの増産と輸出の本格化
1955-58

日本のポータブルラジオは、昭和20年代には、白砂、中島などの中小専門メーカの製品が大半であった。1955年以降はエンパイア、東海、ハイファイ無線など中小メーカが増えただけでなく、松下、三洋、シャープ、東芝など大手メーカがいっせいに参入し、生産が激増した。多いときは月生産台数の半数がポータブルであったという。1955年には中波受信機の30%がポータブルであった(2)。

増加の原因は輸出の増加である。1954年までは輸出の大半が東南アジアと南米向けであったが、1955年には対米輸出が全体の半数を占めるようになった。1955年には約21万台が輸出され、これはポータブルラジオ全生産量の約4割である。翌56年には輸出は倍増した(2)。

デザインはアメリカ製品のコピーが多かったが、品質や技術レベルは向上していた。技術的なトピックとしては、フィラメント電流が従来の半分の25mA管が発売され、電池寿命が延びたことが挙げられる。25mAシリーズには、アメリカ系の改良型であるSFシリーズと、松下がフィリップスから導入した欧州系のDシリーズの2種類がある。

イヤホン端子を備える製品が増えたことも電池の節約には役立った。セットの価格も電池専用で5千円を切る低価格のものが多数登場した。低消費電力化によって5球式や2バンドなどの高級仕様のものが登場するとともに、3球式のイヤホン専用の安価なモデルも登場し、バリエーションが増えた。また、セレン整流器の普及により交直両用型が増え、使いやすくなった。

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真空管からトランジスタへ
1957-60

真空管ポータブルの生産が増加し、輸出が軌道に乗り始めた1955年、東京通信工業(現ソニー)から日本初のトランジスターラジオTR-55が発売された。1957年頃からは多くのメーカがトランジスターラジオに参入した。トランジスターラジオは当初は真空管ポータブルより高価で性能も低かったが、性能は短時間のうちに改善され、安価な乾電池で長時間使用でき、故障も少ない特徴から広く市場に受け入れられた。

トランジスターラジオの伸びに加えて、松下、東芝等の大手メーカがポータブルに進出して中小専業メーカを圧迫したことと、1957年8月に金融引き締めが実施されたことにより、元々低価格で輸出して低利益率だった専業ポータブルメーカの経営は悪化した。1957年に入り、2月に中島ラジオテレビ製作所、3月に東海無線工業、7月に勝山ラジオテレビ製作所、8月には白砂電機が倒産した。国内ではトランジスターラジオが各社から発売されたことで電池代のかかる真空管式ポータブルは投売りとなっていた。また、輸出価格は過当競争で7ドル(FOB)以下にまで下がり、利益が出なくなっていた。(5)当初性能が低かったトランジスターラジオに対抗するために真空管ポータブルは高周波増幅つきの5球式や、オールウェーブの高性能機を投入したが、トランジスターラジオの性能は急速に向上し、競争に勝てなかった。1957年7月、減少する真空管ポータブルに対してトランジスターラジオの生産が伸び、生産台数でポータブル型でトランジスター式が真空管式を上回った。11月にはトランジスター式がポータブルラジオ全体の71%を占めるようになった。(6)

ポータブル専業メーカはトランジスターラジオへの転換を模索したが、この頃はトランジスタの生産が限られ、自社製品の輸出向け生産で手いっぱいだった専業メーカには入手ルートがなく、回ってこなかった。ポータブル専業メーカで生き残ったのは、スタンダードとクラウンくらいだった。この2社はいずれも後発メーカで、遅れて参入した東芝、日立などの大手メーカのOEM供給を担っていた関係で、トランジスターラジオの生産も委託されていた。この関係でトランジスタを入手するルートがあったために、トランジスターラジオに転換することができ、現在まで会社が存続するきっかけとなった。

トランジスターラジオは1958年からはアメリカ市場に大量に輸出されるようになり、日本の代表的輸出品に成長した。1959年にはホームラジオを含むラジオセット生産量で、真空管式よりトランジスタのほうが生産が多くなる。1960年度第4四半期には統計上の生産台数が0となり、絶滅した(4)。真空管式ポータブルラジオは、1950年代のうちに生産されなくなった。本格的にmT管の生産が開始されてわずか8年ほどしか経っていなかった。真空管ポータブルが量産され、本格的に輸出されたのは1955年から58年にかけてのわずか3年弱でしかない。しかし、トランジスターラジオに取って代わられるまでの間、日本のラジオ輸出のパイオニアとして、市場開拓の役割を果たしたのである。

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ポータブルラジオ展示室


アメリカ製品


RCA Victor B-411型 4球スーパー Radio Corporation of America RCA Victor Division  1951年 $27.50

Zenith model H 500 "Trans-Oceanic" 7バンド3ウェイポータブルスーパー Zenith Radio Corp. 1951-54年

TRAV-LER 5300型 4球スーパー TRAV-LER RADIO CORPORATION, 1953年

Emerson 747 サブミニチュア管使用4球スーパー Emerson Radio & Phonograph Corp. 1953-54, $40.00

G.E. MODEL 622 4球スーパー General Electric Co. 1955年頃

RCA Victor 6-BX-6型 3ウェイ4球スーパー Radio Corporation of America RCA Victor and "Victrola" Division  1955年頃

Motorola model 56B1 4球3ウェイポータブルスーパー Motorola Inc.  1956年

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日本製品


日本製:専業メーカ

Continental Model M-500型 4球スーパー Continental Merchandise Co., Inc. 勝山ラジオテレビ製作(株) 1954年

エンパイヤ DX-101型 3ウェイ5球ポータブルスーパー 勝山テレビラジオ製作(株) 1955年 16,950円(電池別)

クラウン PR-300型  3球ポータブルスーパー 旭無線電機(株) 1956年頃

シルバー PC-400型 カメラ型マジックアイ付き4球スーパー 白砂電機(株) 1956-57年 6,950円

シルバー SF-820型 4球スーパー 白砂電機(株) 1956-57年 4,800円

ナカジマ P-156型 4球スーパー 中島ラジオテレビ製作所(株) 1955-56年 5,900円

シルバー DX-300型 3ウェイ4球スーパー 白砂電機(株) 1955-56年 9,800円

日本製:大手メーカ

ナショナル PS-81型  3ウェイ4球スーパー 松下電器産業(株) 1953-54年 18,000円

ナショナル PL-403型 非常用長時間ポータブル4球スーパー 松下電器産業(株) 1955年 8,700円

ナショナル 4W-260型 3ウェイ4球スーパー 松下電器産業(株) 1956年 9,800円

ナショナル EA-185型 3ウェイ2バンド4球スーパー 松下電器産業(株) 1957年 11,900円

ナショナル UA-120型 3ウェイ3バンド5球スーパー 松下電器産業(株) 1957年 16,800円

マツダラジオ  4PC-61 "コンパニオンA" 4球スーパー 東京芝浦電気(株) 1955-56年 9,200円 (NEW)

ビクター 4P-2005型 3ウェイ2バンド4球スーパー 日本ビクター(株) 1957年 11,300円

日立 HP-401型 3ウェイ2バンド4球スーパー 日本ビクター(株) 1957年 11,300円

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 RCA Victor B-411型 4球スーパー Radio Corporation of America RCA Victor Division (U.S.A.) 1951年 $27.50

 

TUBES: 1R5-1U4-1U5-3V4 , Permanent Dynamic Speaker,

アメリカ、RCAの電池専用4球スーパー。当時のRCAのラインナップの中では最も安価なモデルであった。いち早くバーアンテナを採用することで薄く、小型にまとめることができている。このデザインはその後のRCAのポータブルにしばらく引き継がれた。国産のコピー品も数多く作られている。
(所蔵No.11753)

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 Continental Model M-500型 4球スーパー Continental Merchandise Co., Inc. 勝山ラジオテレビ製作(株) 1954年

 

 
TUBES: 1R5-1U4-1U5-3S4, 2.5" Permanent Dynamic Speaker,

エムパイヤのブランドでポータブルラジオおよびキットを生産していた勝山の輸出用モデル。電池専用である。アメリカの商社ブランドのコンチネンタルでOEM供給されていた。デザインはRCA B-411型に酷似しているが、写真のように並べてみると形状や寸法は異なっている。型取りして作ったようなコピー品ではないことがわかる。ただ、オリジナルのRCAよりもキャビネットの肉が厚くなっている。また、超小型のスピーカが作れなかったためにシャーシのレイアウトが微妙に違っていて、同じサイズのB電池が入らないため、小型の品種を使用する。RCAのモデルは裏蓋を外すと分離するようになっているが、このモデルはヒンジが追加されている。便利には違いないが、この部分が破損しているものが多いところを見ると、強度上の弱点となってしまったようである。

RCAのスーパーヘテロダイン特許の特許料を支払っていた(他の日本メーカの大半が払わされた)ため、ライセンスをクリヤしているような文章が表示されてるのがミソである。もちろん、意匠権を買ったわけではないだろう。
(所蔵No.11866)

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 Zenith model H 500 "Trans-Oceanic" 7バンド3ウェイポータブルスーパー Zenith Radio Corp.(U.S.A.) 1951-54年

 
 
TUBES: 1U4 - 1L6 - 1U4 - 1U5/1S5 - 3V4, AC/DC117V , Batt: Z985,A: 9V, B: 90V  BC,SW:2-4,4-8Mc,16M,19M,25M,31M

大型のトランク型ポータブルラジオ。中波の他、2-18Mcの短波を6つに区切った合計7バンドのオールウェーブである。このシリーズは第2次大戦が始まった頃に発売された。本来は大型ヨットに搭載して使用する目的で開発されたが、一部は兵士の慰問用に戦地でも使用された。同社のポータブルの特徴である、取外せるループアンテナ"Wavemagnet"が蓋の裏側に取り付けられている。海上で使用するのに便利なように、2-4Mc、4-8Mcの気象、マリンバンドが追加されている。電池は大容量の組電池を使用する。この大型ポータブルは245,000台あまり生産された。豊かなアメリカ以外では考えられない商品である。
(所蔵No.11096)

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 TRAV-LER 5300型 4球スーパー TRAV-LER RADIO CORPORATION, (U.S.A.) 1953年 

 

TUBES: 1R5 - 1U4 - 1U5 - 3V4, A: 1.5V, B: 67.5V

アメリカの中堅メーカ、トラベラー社の4球スーパー。使用時間を延ばすためか、A電池を2個並列で使用している。バーアンテナを使うことでシャーシが小型化し、薄型のスマートなデザインにまとめられている。
(所蔵No.11585)

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 Emerson model 747 サブミニチュア管使用4球スーパー Emerson Radio & Phonograph Corp. (U.S.A), 1953-54, $40.00

 

TUBES: 1V6 1AH4 1AJ5 1AG4, A: DC1.5V (Emerson No.EM-35), B: DC45V (Emerson No.EM-86),
サブミニチュア管を使用した、スピーカが鳴るポータブルとしては当時世界最小のラジオ(幅6インチ)。後年のトランジスターラジオとあまり変わらないサイズと重量を真空管式で実現した画期的な製品である。小型化した部品や樹脂製シャーシ(まだプリント基板ではない)が開発され、軽量化に寄与した。本格的な"Pocket Radio"として宣伝されたが、厚みが1インチ以上あり、「胸ポケットに」という宣伝文句にはちょっと無理がある。普通のラジオと異なり、裏蓋ではなく、正面パネルを外してメンテナンスを行う(写真右)。小型化したために電池が小さく、B電圧が45Vと低いため、音量が小さいことと電池の持ちが悪いという欠点があった。このモデルは1955年に、外観をほとんど変えずに音声出力回路のみをトランジスタ化した838型にモデルチェンジした。838型はトランジスタと真空管のハイブリッドという珍しい形式のラジオである。

中島無線のコピー品が後に発売されたが、これはmT管を使用しているので一回りサイズが大きい。

(所蔵No.11A035)

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 ナショナル PS-81型 3ウェイ4球スーパー 松下電器産業(株) 1953-54年 18,000円

 
 

 

TUBES: 1R5-1T4-1T4-1U5-3S4, 4"Permanent Dynamic Speaker (National 4P-41), : DC1.5V (UM-1A X2), B: DC67.5V (BL-145) or AC/DC100V

松下最初のポータブルラジオ、中間周波2段の5球スーパー。電池は単一2個とBL-145型67.5V積層乾電池を1個使用する。交直両用で、電池で使うときはシャーシの穴に電源プラグを差し込むと電池に切り替わるようになっている。整流にはセレン整流器を使用。全体のデザインはアメリカ、フィルコ社の51-631型あたりが元になっていると思われる。ツマミのデザインはエマーソンのコピーである。ダイヤルのカバーを引き起こすと、カバーの裏がダイヤル目盛になっている凝った構造である。アメリカ製品より一回り大きく、プラスチックのケースも分厚い(奥行きが10cmもある)。価格も同社のオールウェーブセット並みの高価なものだった。翌年には大幅にコストダウンしたモデルが発売されることで、このモデルは短命に終わった。パーソナルラジオの可能性を求めて多くのユニークな小型ラジオを発売した一連の"PS"シリーズのひとつで、松下の習作といえる。
(所蔵No.11754)

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エンパイヤ DX-101型 3ウェイ5球ポータブルスーパー 勝山テレビラジオ製作(株) 1955年 16,950円(電池別)

 
 
TUBES: 1R5 1T4 1T4 1U5 3S4, A: DC1.5V (UM-1A X2), B: DC67.5V (BL-145) or AC/DC100V

中間周波2段で5球式の高級なポータブルラジオ。まだ低消費電力管がなく、球数が多いために、A電池は単一を2個使用する。メーカの勝山テレビラジオ製作は、輸出用にはContinentalのブランドも使っていた。1955年はポータブルラジオの対米輸出が盛んになった年で、安価なイヤホン用モデルから高級型までバリエーションが多彩であった。このセットの場合、3ウェイなので家庭内では電池の消耗を気にしないで使えるが、安価な5球スーパー2台分に相当する高価なものだった。AC/DC100V専用で、国内用の電池の品番しか記載されていないことから、国内向けのモデルと思われる。

本機は、キャビネットに褪色がみられる。また、A電池のホルダが失われている。

掲載誌:角田卸商報No.20 1955.1

(所蔵No.11A021)

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クラウン PR-300型 3球ポータブルスーパー 旭無線電機(株) 1956年頃

 
TUBES: 1R5 1T4 1S5, A: 1.5V (UM-2), B: 45V (BL-030L)

旭無線は戦後、1948年に創業され、1955年4月からポータブルラジオの生産を開始した後発メーカである。この機種はローエンドの3球式で、イヤホン専用である。このタイプの3球ポケット型スーパーは、電池の消耗が少なく、安価(大体4千円くらい)なため各社から発売された。当初から輸出が考慮されていたため、ラベルの表記は英語のみである。

同社はその後輸出用トランジスターラジオの生産で成長し、1965年からはテレビの製造を開始した。その後もクラウンブランドで輸出専門メーカとして生産を継続したが、1993年には社名を宮越商事(株)に変更してメーカから商社へと業態転換し、現在に至る。

本機は新品未使用である。B電池は本体にオリジナルが残っていた。A電池は当館で撮影用に取り付けたもの。

(所蔵No.11944)

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ナショナル PL-403型 RC-147W 非常用長時間ポータブル4球スーパー 松下電器産業(株) 1955年 8,700円
 
 

TUBES:1R5-1U4-1U5-3S4、5" P.D.SP. (National model 5P-51RC)
松下が非常用長時間ポータブルとして発売したセット。アメリカでよく見られるA/Bを1つの箱に入れたパック型乾電池を使用する。家庭用ではなく、電気が来ていない山間部の工事現場や林業の現場での慰安用に、または防災用として地方公共団体や学校などに備えられた。デザインが戦前の国防受信機によく似ている。戦前の国防受信機の再来と考えてよいだろう。大阪市に非常用ラジオとして納入する実績を上げたが、この製品は1955年のみでカタログから落とされた。

本機は修復されて電池ケースにAC電源が追加されているが、本来は電池専用である。
(所蔵No.11922)
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G.E. MODEL 622 General Electric Co.(U.S.A.) 1955年頃
 
 

アメリカG.E.の電池専用4球スーパー。1R5 - 1U4 - 1U5 - 3V4 の構成である。シンプルに作られ、低コストに仕上がっている。
このセットは"MADE IN USA"だが、この後、ポータブルラジオは日本からの輸出が急増し、OEM供給されたアメリカブランドの日本製品も出回るようになる。
(所蔵No.11101)
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 RCA Victor 6-BX-6型 3ウェイ4球スーパー Radio COrporation of America RCA Victor and "Victrola" Division  1955年頃
 

アメリカ、RCAの3ウェイ4球スーパー。1R5-1U4-1U5-3V4の標準的な構成である。ACと電池(A:1.5V、B:67.5V)両方を使用できる。整流にはセレン整流器を使用している。電池で使用するときは電源プラグをシャーシの孔に差し込んで切り替える。この時代のRCA製ポータブルの代表的モデルである。
(所蔵No.11752)
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Motorola model 56B1 4球3ウェイポータブルスーパー Motorola Inc. (U.S.A.) 1956年
 
 
TUBES: 1R5 1U4 1U5 3V4 Se-rectifier, P.D.SP.(Motorola Golden Voice),
B: DC90V(Eveready No.479, Burges No.P60, General No.176 or equiv.), A: 7.5V(Eveready No.717, Burges No.C5, General No.31 or equiv.) or AC/DC117V

戦前にカーラジオから家庭用ラジオに進出したモトローラのポータブルラジオ。50年代を代表するポップなデザインである。大型のハンドルの中にバーアンテナが内蔵されている。このハンドルを回転して感度を調整できるようになっている。アンテナがセットの外にあるため、キャビネットは鉄ケースにクロス貼りである。
(所蔵No.11931)
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シルバー PC-400型 カメラ型マジックアイ付き4球スーパー 白砂電機(株) 1956-57年 6,950円
 
 
TUBES: 1T4-SF 1R5-SF 1T4-SF 1U5-SF DM-71, イヤホン専用
A: DC1.5V (UM-2) and B: DC67.5V (BL-045L / BL-V45)

カメラの形をしたユニークなポータブルラジオ。プラスチックケースはなく、カメラケースそのものの皮ケースにシャーシが直接納められている。高周波1段付の4球で、出力管はなく、イヤホン専用である。電池は単二のA電池1個と、006Pを長くした形状の細長いBL-045Lを使用する。

掲載誌:電波科学1957年1月号

(所蔵No.m11075) 戸井田コレクション
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シルバー SF-820型 4球スーパー 白砂電機(株) 1956-57年 4,800円
 
 

TUBES: 1R5-SF 1T4-SF 1U5-SF 3S4 -SF
A: DC1.5V (UM-1 X1) and B: DC67.5V (BL-M145 X1), 3.5" P.D.SP.

ポータブル専門メーカ、白砂電機の低価格電池専用4球スーパー。消費電力が少ない25mA管を使用している。輸出を意識したのか、ラベルの表示が英文となっているが、電池の形式が日本式の呼称しか書いていない。

(所蔵No.11036)
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シルバー DX-300型 3ウェイ4球スーパー 白砂電機(株) 1955-56年 9,800円
 
 

TUBES: 1R5-1T4-1S5-3S4
AC/DC100V 50/60Hz or A: DC1.5V (UM-1 X1) and B: DC67.5V (BL-M145 X1), 3.5" P.D.SP.

ポータブル専門メーカ、白砂電機の電池専用4球スーパー。旧来のアメリカ式50mA管を使用している。セレン整流器を使用した交直両用である。輸出を意識したのか、ラベルの表示が英文となっているが、電池の形式が日本式の呼称しか書いていない。また、バンドがアメリカ向けにできるように日本の535-1605kcではなく、530-1650kcとなっている。
(所蔵No.11339)
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 ナカジマ P-156型 4球スーパー 中島ラジオテレビ製作所(株) 1955-56年 5,900円
 


ナカジマ P-156とエマーソン747(左)の比較
TUBES: 1R5-SF - 1T4-SF - 1U5-SF - 3S4-SF, A: DC1.5V (UM-2), B: DC67.5V (BL-V145)

日本のポータブルのパイオニアである中島の電池専用4球スーパー。低消費電力の25mA管を使用している。B電圧はエマーソンより高い67.5Vだが、小型のBL-V145型の電池を採用している。このモデルは前年のP-155型をモデルチェンジしたもの。デザインのオリジナルはアメリカ・エマーソンの747型である。エマーソンはサブミニ管を使用しているためこのセットより一回り小さい。サイズが拡大されている以外は、前面パネルを外してメンテナンスする構造を含め、そっくりである。このモデルが発売された前年には、本家エマーソンはトランジスタとのハイブリッドのモデルに変わっている。このモデルは東芝にOEM供給されたほか、海外向けにも複数のブランドでOEM供給されている。
(所蔵No.11037)
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マツダラジオ  4PC-61 "コンパニオンA" 4球スーパー 東京芝浦電気(株) 1955-56年 9,200円



TUBES: 1R5-SF 1T4-SF 1U5-SF 3S4-SF, A: DC1.5V (UM-2), B: DC67.5V (BL-V145)

東芝のポータブルラジオ1号機。低消費電力の25mA管を使用した電池専用の4球スーパー。中島無線のP-156型のOEMである。P-156とはパネルのデザインが異なる。東芝の発表資料では「マツダラジオ」となっているが、本体にマツダのマークはない。大手メーカは小型ラジオの生産ラインやノウハウを持たなかったため、専業メーカへのOEMからポータブルの生産をスタートした。ブランド価値ということか、オリジナルのナカジマの2倍近い定価を付けていた。

掲載誌:『東芝通信』第16号 1955年
(所蔵No.11A278)
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ナショナル 4W-260型 3ウェイ4球スーパー 松下電器産業(株) 1956年 9,800円
 
 
TUBES: TUBES: 1AB6/DK-96 - 1AJ4/DF-96 - 1AH5/DAF-96 - 3C4/DL-96(ナショナル), セレン整流器
AC/DC100V 50/60Hz or A: DC1.5V (UM-1 X1) and B: DC67.5V (BL-M145 X1)

松下がフィリップスの省電力型25mA管「Dシリーズ」を国産化したシリーズを最初に採用したポータブルラジオ。AC/DC100Vを乾電池と両用の3ウェイ型である。コネクタ付きの電源コードを採用し、ACコードの接続でバッテリーとの切り替えができる構造を初めて採用した(実用新案出願)。後のラジカセやポータブルテレビなどで一般的になる安全装置である。

掲載誌:『電波科学』1955年12月号

(委託No.s11070) 柴山 勉コレクション

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ナショナル EA-185型 3ウェイ2バンド4球スーパー 松下電器産業(株) 1957年 11,900円
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背面外観(左)とフレームアンテナを上げた状態(中)、内部に貼られたDシリーズのラベル(右)
TUBES: 1AB6/DK-96 - 1AJ4/DF-96 - 1AH5/DAF-96 - 3Y4/DL-97(ナショナル) , セレン整流器,
AC/DC100V 50/60Hz or A: DC1.5V (UM-1 X1) and B: DC67.5V (BL-M145 X1), 3.5" P.D.SP.
BC: 540-1600kc, SW: 3.9-10Mc

松下の高級型ポータブル。540-1600kcの中波のほかに3.9-10Mcの短波バンドを持つ。フィリップスから技術導入した省電力型のDシリーズ管を採用。セレン整流器を使った交直両用である。短波受信用にフレームアンテナを備えている。
(所蔵No.11064)
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ナショナル UA-120型 3ウェイ3バンド5球スーパー 松下電器産業(株) 1957年 16,800円
 
  外観(左)と背面(右:フレームアンテナを上げた状態)
TUBES: 1AJ4/DF-96-1AB6/DK-96 - 1AJ4/DF-96 - 1AH5/DAF-96 - 3Y4/DL-97(ナショナル), セレン整流器,
AC/DC100V 50/60Hz or A: DC1.5V (UM-1 X1) and B: DC67.5V (BL-M145 X1), 3.5" P.D.SP.
BC: 540-1600kc, SW1: 3.2-7Mc, SW2: 7-12Mc

松下の最高級ポータブル。540-1600kcの中波のほかに3.2-12Mcの短波帯を2つに分けたバンドを持つ。フィリップスから技術導入した省電力型のDシリーズ管を採用。セレン整流器を使った交直両用である。通常のポータブルよりは一回り大きく、高周波増幅付のため本格的な3連バリコンとコイルパックを使用している。短波受信用にフレームアンテナおよび外部アンテナ/アース端子を備えている。

デザインも従来の真空管ポータブルから離れた、トランジスターラジオをイメージした新しい雰囲気になっている。

この年に松下はトランジスターラジオを発売している。電池のコストと持続時間では勝ち目のない真空管ポータブルは、トランジスターで実現できないオールウェーブと高感度化に走った。この機種の価格は、中級のオールウェーブが買えるほど高価であるが、トランジスターラジオも高価だったので、一応競争力はあった。真空管ポータブルの最後を飾る製品といえる。
(所蔵No.11A027)
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 ビクター 4P-2005型 3ウェイ2バンド4球スーパー 日本ビクター(株) 1957年 11,300円
 
 

TUBES: 1AB6/DK-96 - 1AJ4/DF-96 - 1AH5/DAF-96 - 3Y4/DL-97(ナショナル) , セレン整流器,
AC/DC100V 50/60Hz or A: DC1.5V (UM-1 X1) and B: DC67.5V (BL-M145 X1), 3.5" P.D.SP.
BC: 535-1605kc, SW: 3.8-7Mc

遅れてポータブルに参入したビクターの交直両用2バンドポータブル。松下の傘下に入っていたためか、松下製のDシリーズ管を採用している。短波のバンドは狭く、3.8-7Mcである。短波用にロッドアンテナが使われている。既にトランジスターラジオが発売されていたので、短命であった。

掲載誌:『無線と実験』 1957年3月号、5月号
(所蔵No.11060)
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 日立 HP-401型 3ウェイ5球スーパー (株)日立製作所 1956-58年 12,700円
 
 

TUBES: 1T4-SF 1R5-SF - 1T4-SF - 1U5-SF - 3S4 -SF, セレン整流器,
AC/DC100V 50/60Hz or A: DC1.5V (UM-1 X1) and B: DC67.5V (BL-M145 X1), 3.5" P.D.SP.

日立の最後期の真空管式ポータブル。1956年末に発売され、1957年4月に発売された同社初のトランジスターラジオと併売された(3)。3ウェイのRF付5球スーパーで、25mA管を使用している。このモデルは同社の真空管ポータブルの最上位機種である。回路図に、SF管の新名称1AM4(1T4-SF), 1AQ5(1R5-SF), 1AS5(1U5-SF), 3W4(3S4-SF)が記載されているのが珍しい。トランジスターラジオの機種が増える中で最後まで販売され、1958年6月にカタログから落とされた。アイボリー色のカラーバリエーションも存在する。
(所蔵No.11050)
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参考文献

(1)『電波新聞』 昭和25年11月15日 (電波新聞社 1950年)
(2)通産省重工業局編 『日本の電子工業』 (日刊工業新聞社 1957年)
(3)(株)日立製作所 『日立』 Vol.18-19 (日立評論社 1956-57年)
(4)日本放送協会編 『NHK年鑑』 1962年版No.1 (日本放送出版協会 1961年)
(5)中島祐喜 「トランジスタラジオ輸出の展開」 (大阪大学大学院経済学研究科 2008年)
(6)『ラジオテレビ年鑑』 (ラジオテレビ新聞社 1958年)

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