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トランジスタ式ホームラジオ
(1955-73)
トランジスタの低消費電力という特性は、ポータブルラジオに適していた。このため、トランジスターラジオの多くはポータブルタイプであり、「トランジスターラジオ」という言葉は、小型のポータブルラジオの代名詞となった。しかし、トランジスターラジオの開発当初から、家庭用の据置型ラジオをトランジスタ化したものが試作されていた。当初は僻地の学校放送用受信機として作られたものであったが、一般向けにも発売されるようになった。
トランジスターラジオがポータブルラジオの代名詞となったことで、携帯用の小型ラジオは、あえて「ポータブルラジオ」とは言われなくなり、代わりに、家庭用の据置型ラジオが「ルームラジオ」「ホームラジオ」などと呼ばれるようになった。ここでは、トランジスタ式の据置型ラジオについて、真空管式ラジオが廃れた後によく使用された「ホームラジオ」の表記で統一する。
ホームラジオの形態の多様化
トランジスタ式ホームラジオには、薄型のキャビネットでハンドルを備え、乾電池でも使用できる(乾電池専用のものもある)セミポータブルのものも多いが、ユーザーは意外と保守的で、真空管式ラジオとまったく変わらないデザインの据え置き専用のものも1970年代半ばまで多く製造された。1960年代後半になり、トランジスターアンプの出力が大きくなると、ステレオセットに近い形態の音質を重視した大型のラジオも現れた。
1970年代以降はセミポータブル型は少なくなり、中型の据え置き型が中心となる。また、電池式の小型ラジオの中に、携帯を考慮していない、シガレットケースや小物入れ、オルゴールなどにラジオが付いたような形態の製品、ビルの竣工記念や商品の販促のために建物のミニチュアや商品のパッケージにラジオを組み込んだ「ノベルティラジオ」も一般的になった。
クロックラジオの普及
クロックラジオが一般的になったのもトランジスタ化されてからである。タイマーや時計が付いたラジオはアメリカでは真空管時代から多かったが、日本では、枕元に大型のラジオを置くなどという贅沢なことをできるユーザーが限られていたこともあり、時計付きラジオは一般的ではなかった。安価で小型のトランジスターラジオが一般的になった60年代後半に、時計付きラジオが多数発売された。当初はアナログ式時計を備えていたが、1960年代後半に機械式のディジタル時計が発売されると、見やすいディジタル式が一般的になった。
ホームラジオのその後
トランジスターラジオの中でもホームラジオの生産量は少ない。年によってばらつきはあるが、多くても全生産量の数%である。現在でも店舗用などに向けて大型のホームラジオが数種類作られている。また、クロックラジオは現代でも一般的に使われている。この他音質を重視した大型のラジオやクラシックラジオのレプリカなど、特殊な製品として少数の据置型ラジオが作られている。
国産品
NEC: 日本電気(株)
NEC NTC-6H78型 6石クロックラジオ 1965年頃
Sanyo / Channel Master: 三洋電機(株) / Channel Master Corp.
サンヨー 6S-08型 6石2バンド・ホームラジオ 1960-61年 9,850円
Channel Master Model 6510 6石ホームラジオ 1961年頃
サンヨー 6SC-10型 6石クロックラジオ 1961年 15,500円
サンヨー 6C-120型 6石ホームラジオ 1969年 4,500円
Victor: 日本ビクター(株)
ビクター 8H-4D型 8石4バンド・ホーム・ラジオ 1963年頃
ビクター 5H-28型 "シリコーン・サーキット5" 5石2バンドホームラジオ 1966年
SONY : ソニー(株)
SONY TR-712型 7石ホームラジオ 1958-59年 9,300円
SONY TR-627型 6石ホームラジオ 1964-65年 5,950円
SONY 8F-38型"ソリッドステートファミリD" 9石FM-AMホームラジオ 1966-68年 12,500円
SONY STA-38型"ソリッドステートファミリD" FMステレオアダプタ 1966-68年 9,500円
SONY 8F-48型"ソリッドステートファミリW" 9石FM-AMホームラジオ 1968年 12,500円
SONY STA-48型"ソリッドステートファミリW" FMステレオアダプタ 1968年 10,000円
SONY 8RC-49型 6石時計付ラジオ 1967-68年 9,800円
SONY 8FC-59/8FC-59F型 "デジタル24" 8石FM-AM時計付きラジオ 1968/70年 13,800円
SONY ICF-C700 "デジタル24 ブライト" 1 IC 5石FM-AM時計付ラジオ 1971年 17,800円
SONY TFM-9200 8石FM-AMホームラジオ 1971年 9,500円
Toshiba : 東京芝浦電気(株)
東芝 7TH-425型 壁掛け型7石スーパー 1960-61年 13,000円
東芝 11M-885F/AC-885E/TSS-885 "GT Double" ポータブル兼用11石ホームラジオ 1968年頃
National / ナショナル:松下電器産業(株)
ナショナル T-90型 時計付8石2バンドスーパー 1961年 16,800円
National Panasonic / ナショナル・パナソニック: 松下電器産業(株)
ナショナル・パナソニック R-145型 "パナホーム" 6石ホームラジオ 1964年 5,980円 (NEW)
ナショナル・パナソニック RE-190型 6石ホームラジオ 1967-68年 6,950円
ナショナル・パナソニック RC-10型 "タイミィ10" 6石クロックラジオ 1968年 6,500円
ナショナル・パナソニック RE-637型 9石FM-AMホームラジオ 1972年 7,900円
”パナペット” シリーズ
ナショナル・パナソニック R-8型 "パナペット" 6石小型ラジオ 1963-64年 3,980円
ナショナル・パナソニック R-1880型 "パナペットS" シガレットケース型6石スーパー 1967年 4,800円
ナショナル・パナソニック R-72型 "パナペット・クルン" 6石ファッションラジオ 1969-72年 3,700円(日本国内仕様)
/Panasonic R-72 "Toot A Loop" (輸出仕様)
ナショナル・パナソニック R-70型 "パナペット70" 6石小型ラジオ 1970年 3,900円
ナショナル・パナソニック R-88型 "パナペット・デート" 万年カレンダー付6石ラジオ 1972年頃
ナショナル・パナソニック RF-93型”パナペットえふえむ” 9石FM-AMラジオ 1973年 6,500円
Hitachi: (株)日立製作所
日立 "RITA" W-832型 8石2バンドルームラジオ 1960年頃
日立 W-542型 2バンドホームラジオ 1970-73年
Columbia: 日本コロムビア(株)
コロムビア TFC-140型 10石FM-AMホームラジオ 1967年頃
ONKYO: オンキヨー 大阪音響(株)
オンキョー 12LF-200J型 12石FM-AMハイファイホームラジオ 1968年頃
Pioneer: パイオニア パイオニア(株)
パイオニア セパレートラジオ R-200型 ディジタル時計付FM-AM ステレオラジオ 1972年頃 39,800円
FUJI DENKI : 富士電機製造(株)
FUJI TRB-667W型 6石ホームラジオ 1967年
その他のメーカ
SANWA 4BH-23 8石4バンド・ホーム・ラジオ 三和電気計器? 1962年頃
シンガー(SINGER) 920 BD 9石2バンド・ホーム・ラジオ Singer Manufacturing Company 1963年頃
リンカーン(RINCAN) 6T-1型 6石ホームラジオキット リンカーン電機(株) 1966-67年 5,500円
MARC 地球儀型2バンドスーパー ニューホープ実業(株) (Code 508) 1960年頃
ノベルティラジオ
NHKホール・モデル 7石スーパー 松下電器産業(株) 日本放送協会 1973年
外国製/外国ブランド
NEC NTC-6H78型 6石クロックラジオ 新日本電気(株) 1965年頃
6-Trs. , AC100V 60c/s, BC: 535-1605kc,
NECの交流電源専用クロックラジオ。アナログ式の電気時計を備える。
(所蔵No.m12010) 旧ふくやまラヂオ博物館コレクション
日立 "RITA" W-832型 8石2バンドルームラジオ 1960年頃 (株)日立製作所
Tr: 2SA82 2SA81 2SA12 2SA12 2SB75 2SB77 2SB156 2SB156 1N34A 1N34A HV-17
日立のトランジスタ式ルームラジオ。真空管式と見分けの付かないデザインで、普通の真空管ラジオより大きく、幅60cm近い。基本的にAC専用だが、DCアダプタまたは外部電池(9V)を接続するコネクタを備える。マジックアイの代わりにメータを備える。
(所蔵No.12021)
サンヨー 6S-08型 6石2バンド・ホームラジオ 三洋電機(株) 1960-61年 9,850円
Trs: 2SA60 2SA49 2SA53 2Sb54 2SB56 X2 1N60 X3
DC6V (UM-1 / Size "D" X4), BC: 540-1600kc, SW: 3.8-12Mc
サンヨーの初期のトランジスターホームラジオ。ハンドルが付いたセミポータブル型である。イヤホン端子以外のアクセサリを全く持たないシンプルなモデルだが、真空管式のセットより割高であった。派生モデルとして輸出向けにChannel Master 6510型が生産されていた。
本機は、ツマミ先端のモールとハンドルが失われている。
掲載誌:電波実験 臨時増刊 No.7 最新オールトランジスタ回路集 1961.5 (株)電波実験社
(所蔵No.12230)
Channel Master Model 6510 6石ホームラジオ 三洋電機(株)/Channel Master Corp. 1961年頃
Trs: 2SA60 2SA49 2SA53 2Sb54 2SB56 X2 1N60 X3
DC6V (UM-1 / Size "D" X4), BC: 540-1600kc,
サンヨーが、国内モデル6S-08型を、米チャンネル・マスター社向けにOEM供給したもの。マークが異なるほか、国内用は2バンドであるのに対して中波専用となっている。国内用ではバンドスイッチとなっている中央のスライドスイッチはトーンコントロールに変更されている。2台所蔵している同型機のシリアルナンバーから、このモデルは短期間に16万台以上生産されたことがわかる。
(所蔵No.12231-1,2)
サンヨー 6SC-10型 6石2バンドクロックラジオ 三洋電機(株) 1961年 15,500円
Trs: 2SA60 2SA49 2SA53 2SB54 2SB56 2SB56,
DC6V (UM-1 / Size "D" X4), BC: 540-1600kc, SW: 3.8-12Mc
サンヨーのクロックラジオ1号機、薄型の本体の上に、シチズン製電気時計がはめ込まれている。時計部分は、左にひねると簡単に取り外すことができる。
本体右上部に開けられた2つの穴は、ACアダプターを取り付けて交流式に改造した痕跡である。電池交換が煩雑だったためか、スタンダード製のACアダプタを内部配線を切断して無理やり取り付けていた。内部のメモから1967年に行われた改造であることが判明した。
この改造部分は当館で撤去した。
(所蔵No.12209)
サンヨー 6C-120型 6石ホームラジオ 三洋電機(株) 1969年 4,500円
6-Trs. DC6V (4-UM-1), BC only
ホームラジオだが、電池専用で交流電源では使用できない。余分な装飾がまったく無く、シンプルで安価な製品である。1960年代末になると多機能の高級ラジオとシンプルで安価な製品の両方が存在するようになる。
(所蔵No.12153)
SANWA 4BH-23型 8石4バンド・ホーム・ラジオ 1962年頃 三和電気計器?
8-Trs (Hitachi), BC:535-1605kc, SW1: 1.6-4.8Mc, SW2: 4.8-14Mc, SW3: 14.3-23Mc,
2 way speaker
ヨーロッパ風のデザインのホームラジオ。真空管式ラジオと変わらないデザインである。バリコンやコイルは真空管用の部品が使われている。バーアンテナをつまみで回転させる"Gyro
Antenna"が備えられている。向きを変えられない大型セットにバーアンテナを使用するために、真空管ラジオでも使われているアイデアである。トランジスタ式で基板は小さいため、シャーシの半分は単一乾電池6個分(9V)の電池ケースで占められている。背面カバーの表示はすべて英語表記となっている。輸出を主眼に置いたセット思われる。日立のPNP型ゲルマニュームトランジスタを使用している。メーカは不明だが、Sanwaのロゴはテスターの三和電気計器と同じものである。
(所蔵No.12010)
ビクター 8H-4D型 8石4バンド・ホーム・ラジオ 日本ビクター(株) 1963年頃
8-Trs. P.D.SP (Victor SK02026W), DC9V (UM-1 X6) or AC100V (ACアダプタAA-1型使用)
ビクターのトランジスタ式ホームラジオ。フィリップスやテレフンケンなどのヨーロッパ製のセットを思わせるデザインである。中波のほかに SW1: 2-4Mc, SW2: 4.6-10Mc, SW3: 11.7-22Mcの3つの短波帯を備えるオールウェーブである。一見輸出用と思われるセットだが、裏蓋などは日本語表示でAC100V仕様の国内向けである。パネルのデザインは同社のステレオセットのパネルと共通点がある。
(所蔵No.12098)
ビクター 5H-28型 "シリコーン・サーキット5" 5石2バンドホームラジオ 日本ビクター(株) 1966年 6,900
5-Trs. AC100V, BC: 530-1600kc
ビクターのホームラジオの中ではもっとも安価な製品。アルミ板をプレスしただけのシンプルなパネルとプラスチックのフレームにプリント化粧版張りのキャビネットの組み合わせである。同社は、この頃から使われ始めたシリコン・トランジスタを強調して「シリコーン・サーキット」の商品名を使用していた。
(所蔵No.12172)
リンカーン(RINCAN) 6T-1型 6石ホームラジオキット リンカーン電機(株) 1966-67年 5,500円
(左)広告(広瀬有名品カタログ15thED、一部) (右)キャビネット底に貼ってある回路図
Trs: 2SA53 2SA52 2SA49 2SB45 2SB189 X2 1N60, AC100V / DC6V (UM-3 X4), BC:535-1605kc
ポータブルラジオメーカとして創業したリンカーン電機のトランジスタラジオキット。同社は他に5球スーパーのキットを数種類発売していたが、他社の安価な完成品と比べても決して安くはない。シャーシの主要部品は取り付けられており、部品のパッキングなど手作業が多く、効率が悪かったのだろう。また、この実物もアマチュアの組み立てによるものらしく、はんだづけの仕上がりはよくない。アフターフォローも大変だっただろう。ラジオの物品税率も低くなり、この時代には安さのためにラジオキットを組み立てるということはなくなり、電子工作の実習もしくは楽しみのために組み立てられるものになっていた。
(所蔵No.12142)
SONY TR-712型 7石ホームラジオ ソニー(株) 1958-59年 9,300円
Trs: 2T73 2T65 2T65 2T76 2T76 2T69 2T69 (SONY)
DC4.5V (JIS UM-1 X3), BC:535-1605kc
ソニーの初期のホームラジオ。パネルには"HANDY PERSONAL"とあるが、日本語のカタログでは「ホームラジオ」とされている。大型の出力トランスとスピーカ(12cm)で、音質を重視した設計になっている。電池専用で単一乾電池を3個使用する。1959年当時のソニーのラインアップの中では安価なモデルだった。
クリーム色のカラーバリエーションがあり、どちらかといえば、写真の色よりクリーム色のほうが一般的である。1960年に、2バンドのTR-712B(11,000円)にモデルチェンジした。TR-712Bは、デザインはほとんど同じで、短波のダイヤルが追加され、セット右上にプッシュ式のバンド切替スイッチが追加されているのみである。
本機は、バッテリーホルダ用の筒が失われている。
(所蔵No.12179)
SONY TR-627型 6石ホームラジオ ソニー(株) 1964-65年 5,950円
DC6V (JIS UM-1 or Size "D" X4), BC: 530-1605kc
ソニーの中波専用ホームラジオ。電池専用で単一乾電池を4個使用する。キャビネットは、プラスチックに木目印刷が施されている。この形はトランジスタ式のセミポータブルラジオの典型的なスタイルとなった。5年前に発売されたTR-712型と比較すると、部品の小型化、部品点数の削減が進んでいることがわかる。価格は30%以上安くなっている。
(所蔵No.12180)
SONY 8F-38型 / STA-38型 "ソリッドステートファミリD" 9石FM-AMホームラジオ ソニー(株) 1966-68年 12,500円 / 9,500円
ステレオアダプタSTA-38(左) と、FM/AMラジオ 8F-38型(右)
9-Trs. AC100V / DC6V (4-UM-1), BC: 530-1605kHz, FM: 76-90MHz
STA-38仕様:9石 8F-38専用、Lch、電源はラジオから供給
この”ソリッドステートファミリD”は、真空管ラジオ時代のデザインを断ち切った斬新なものとして1966年のグッドデザイン賞に選ばれた。幅(200mm)より高さ(204mm)が高く、薄型の特異なデザインは、天面後部角に取っ手が設けられ、持ち運びことができる。
デザインを合わせたステレオアダプタSTA-38型(9,500円)が用意され、簡単なステレオセットとすることができた。ステレオアダプタはラジオから電源を取るようになっていて、専用のケーブルで接続すると、ステレオの左チャンネルとして動作する。このラジオはステレオアダプタとペアとしたときにバランスが取れるようにデザインされている。当時、FMステレオ放送はまだ始まったばかりだったが、いち早く対応した製品といえる。
(8F-38 : 所蔵No.12151 / STA-38 : 所蔵No. m12060:群馬県、小幡様寄贈)
SONY 8F-48型/STA-48型"ソリッドステートファミリW" 9石FM-AMホームラジオ/FMステレオアダプタ ソニー(株) 1968年 12,500円/10,000円
ステレオアダプタSTA-48(左) と、FM/AMラジオ 8F-48型(右)
8F-48仕様: 9-Trs. AC100V / DC6V (4-UM-1), BC: 530-1605kHz, FM: 76-90MHz
STA-48仕様:11石 8F-48専用、Lch、電源はラジオから供給
1966年に発売された8F-38型”ソリッドステートファミリD”は、真空管ラジオ時代のデザインを断ち切った斬新なものとして1966年のグッドデザイン賞に選ばれたモデルだが、この8F-48型は、そのバリエーションモデルである。愛称の"W"は「ウッド」の意味で、8F-38型のデザインのコンセプトを維持しながら木製キャビネットとしたもの。価格は同じである。幅(245mm)より高さ(255mm)が高く、薄型の特異なデザインは、背面に取っ手と壁掛け用のねじ穴が設けられ、さまざまな使い方に対応している。この機種では据え置き型を重視したコンセプトになり、8F-38型にあったロッドアンテナはなくなり、外部アンテナ端子となっている。
デザインを合わせたステレオアダプタSTA-48型(10,000円)が用意され、簡単なステレオセットとすることができた。ステレオアダプタはラジオから電源を取るようになっていて、専用のケーブルで接続すると、ステレオの左チャンネルとして動作する。テープ入力とフォノ入力があり、専用の小型レコードプレーヤPS-48(6,460)が用意されていた。
1968年のカタログには8F-38型も掲載され、併売されていたことがわかる。国内向けの製品である。木目の高級なキャビネットにしながらプラスチックの8F-38と同じ価格というところに無理があったのか、この機種は短期間でカタログから落とされた。
写真のSTA-48型はキャビネットの褪色が著しい。オリジナルの色は8F-48型のほうである。
(所蔵No.12127/12185)
SONY 8RC-49型 6石時計付ラジオ ソニー(株) 1967-68年 9,800円
6-Trs. AC100V 60Hz, BC: 530-1605kHz
日本では時計付きラジオは真空管時代には一般的ではなかったが、トランジスタラジオ時代になって多くの製品が発売されるようになった。電池式のセットの場合はゼンマイ式の時計が組み合わせられたが、据え置きのセットでは電気時計が組み合わせられた。スリープタイマーと目覚ましタイマーの設定ができる。アナログ式時計を使ったクロックラジオの最後の頃のモデルである。
(所蔵No.12150)
SONY 8FC-59/8FC-59F型 "デジタル24" 8石時計付きラジオ ソニー(株) 1968/70年 13,800円
8-Trs. AC100V 60Hz, BC: 530-1605kc, FM: 76-90Mc
機械式デジタル時計を初めて採用したのがソニーの"デジタル24"シリーズである。スピーカは下向きに底面に付けられている。タイマーでラジオの電源が入る他、スリープ機能、ブザーによる目覚ましが用意されている。また、別売もされていたピロースピーカが付属していた。デジタルクロックラジオのデザインの基本形を作ったこの機種は、Gマークに選定された。写真は1970年2月にマイナーチェンジされたF型のほうだが、1968年の初期型との違いはツマミのデザイン程度で初代とデザインの基本は変わっていない。この黒色のほかに白と赤のバリエーション、および木製キャビネットの高級型8FC-71型が用意されていた。
1970年10月には”IC デジタル24"8FC-61型にモデルチェンジした。
(所蔵No.12168/12182)
SONY ICF-C700 "デジタル24 ブライト" 1 IC 5石時計付ラジオ ソニー(株) 1971年 17,800円
1 IC 6-Trs. AC100V 50Hz, BC: 530-1605kHz, FM: 76-90MHz
1968年に機械式デジタル時計を採用した"デジタル24"シリーズの最初のモデルが発売された。この機種はIC化した後継機種で、その中でも木製キャビネットを採用した上級モデルである。Gマークに選定された初代とデザインの基本は変わっていないが、旧型では下向きに底板に取り付けられていたスピーカを上側に移動して音質の改善を図っている。この形が、表示部が蛍光表示管やLEDに変わっても、クロックラジオの基本的なデザインとして引き継がれた。
(所蔵No.12158)
SONY TFM-9200 8石FM-AMホームラジオ ソニー(株) 1971年 9,500円
8-Trs. DC6V (JIS UM-1 X4), AC100V, BC: 530-1605kHz, FM: 76-90MHz
ソニーの標準的なセミポータブル型ホームラジオ。プリント基板に直接印刷して形成する抵抗器が使われている。バリエーションとしてほぼ同じデザインで中波専用のTR-9600型(6,800円)が追加された。
本機は、電池を収納する筒が失われている。
(所蔵No.12187)
東芝 7TH-425型 壁掛け型7石スーパー 東京芝浦電気(株) 1960-61年 13,000円
Trs: 2SA52 2SA49 2SA53 1N60 1N60 2SB54 2SB54 2SB189 2SB189
DC6V (JIS UM-1 X4), AC100V, BC: 530-1605kHz
壁掛け専用の特異なデザインのトランジスタラジオ。下側のチェーンを引くと電源が入る。また、アンテナの方向をツマミで動かすことができる。ダイヤルの目盛は上下対称に付けられている。直径29㎝のプラスチックキャビネットのダイヤル脇の左右に9㎝のスピーカを2個配置している。ユニークなデザインだが、使用方法が限定されるためか、この機種がその後発展することはなかった。ツマミの地色が黒いもの、本体の吊り方がチェーンでなく、背面に直接金具を付けて壁にかけるタイプのバリエーションが確認されている。金具や色を選べたのか、年代によるものかは不明である。
(所蔵No.12206)
東芝 11M-885F/AC-885E/TSS-885 "GT Double" ポータブル兼用11石ホームラジオ 東京芝浦電気(株) 1968年頃
ラジオを装着した状態(左)と、ラジオユニット装着部(右)
ポータブルラジオ部
11-Trs. DC4.5V(SUM-3 X3) / AC100V, 10cm P.D.SP. (Uphonica type), BC: 530-1600kc, FM: 76-90Mc
ラジオ部を取り外してポータブルラジオとして使えるユニークなホームラジオ。スピーカーボックス(TSS-885)の上部にはACアダプタ(AC-885E)が取り付けられ、ラジオ部とは3個のミニプラグで接続される。AM-FMのラジオ部(11M-885F)は、スピーカーボックスの上蓋を持ち上げると押し出されて切り離される仕掛けになっている。ポータブルラジオとして使う時は単二乾電池3個で動作する。本体に装着した場合はAC電源で操作するが、充電式ではない。
(所蔵No.12228)
日立 W-542型 2バンドホームラジオ (株)日立製作所 1970-73年 (日本/台湾製)
AC100V専用
日立のホームラジオ。真空管時代以来の古典的なスタイルのセットだが、全体のフォルムやシボの入った表面仕上げなどに、精一杯新しさを出そうとした努力が伺える。青色のバリエーションが存在する。また、後期型では正面パネルに”IC”のマークが追加されている。実際には、高周波部と音声出力には個別のトランジスタが使われ、音声増幅部と思われる回路に小規模なハイブリッドICが使われているのみで、モノリシックICは使われていない。この機種はデザインを変えずに台湾に生産を移している。部品の密番から1973年製と思われる後期型のモデルは台湾製である。
(所蔵No.12128)
ナショナル T-90型 時計付8石2バンドスーパー 松下電器産業(株) 1961年 16,800円
8-Trs. Battery for clock: DC1.5V(UM-1), Battery for radio: DC6V(UM-2 X4),
BC: 535-1605kc, SW: 3.8-12Mc
初期のタイマー機能の付いた時計付きトランジスタラジオ。電池式で乾電池は台座の部分に収納される。電気時計はシチズン製である。初期のクロックラジオは電池式のモデルが多いが、長時間通電されるため電池交換が煩雑になり、コストもかかる。ラジオを複数持てない時代には家庭用でもセミポータブルが必要だったかもしれないが、1960年代後半になるとクロックラジオはAC専用になる。この年の松下のトランジスタラジオの中でも高価なモデルであった。トランジスタラジオに付けられた小型の時計はシチズンやセイコーなどの一流メーカから供給を受けていた。このこともクロックラジオの高コストの原因だっただろう。
本機は時計のパネルが曇っている。
(所蔵No.12285)
ナショナル・パナソニック R-145型 "パナホーム" 6石ホームラジオ 1964年 5,980円
6-Trs. DC6V (UM-3 X4) / AC100V, BC: 535-1605kc
低価格の小型セミポータブルラジオ。電源回路を内蔵し、単三乾電池の他にAC100Vでも使用できる。5球スーパーの最も低価格のモデルと同じ定価が付けられている。現在、パナソニックの住宅事業のブランドとなっている「パナホーム」の愛称が付けられたが、これは同時代の「パナペット」に対して付けられたものと思われる。当時は「ナショナル住宅」が始まったばかりで、住宅が「パナホーム」を名乗るようになるのは1977年のことである。
(所蔵No.12321)
ナショナル・パナソニック R-8型 "パナペット" 6石小型ラジオ 松下電器産業(株) 1963-64年 3,980円
6-Trs. DC4.5V (UM-3 X3) BC:535-1605kc
5球スーパーをミニチュア化したような特異なデザインのラジオ。幅は17cmしかない。天板が蓋になっていて、内部が小物入れとなっている。カタログ写真ではネックレスが入れられている。当時としては珍しく女性ユーザを意識した商品である。黒色のバリエーションもあり、男性ユーザー向けということだったようである。
発売後1年経った時の販促資料にはユーザーアンケートの結果がまとめられている。これによると、通常のポータブルラジオでは10%以下の女性ユーザがこの機種では33%と非常に多い。また、安価なことから若年層に人気があり、購入者の平均年齢が32歳、30歳以下のユーザが52%を占めていた。小物入れはタバコ入れとしての使い方が48%、装身具を入れるのが22%という結果である。パナペットシリーズは、パナペット7にモデルチェンジして60年代末まで製造された。
本機は、ふたのヒンジが破損している。
(所蔵No.12167)
ナショナル・パナソニック R-1880型 "パナペットS" シガレットケース型6石スーパー 松下電器産業(株) 1967年 4,800円
6-Trs., DC6V (UM-3D X4), BC: 525-1605kc
応接セットのテーブルによく置かれていたシガレットケースにラジオを組み込んだ製品。スモークアクリルのふたが付いた本体右側がロングサイズの煙草が入るシガレットケースになっている。女性ユーザーを意識したパナペットに対して、こちらは男性的なデザインである。
(所蔵No.12208)
ナショナル・パナソニック R-72型 "パナペット・クルン" 6石ファッションラジオ 松下電器産業(株) 1969-72年 3,700円(日本仕様)
/Panasonic R-72 "Toot A Loop" (輸出仕様)
6-Trs, DC9V (006P X1), BC: 525-1605kHz,
「スペース・エージ」を代表するユニークなデザインのポータブルラジオ。赤、青、緑、黄、白のカラー・バリエーションがあった。中央の関節で回転させることができ、自由な形態で使うことができる。リング状にすると腕に巻いて持ち運ぶことができる
!?。左右のリングは重量バランスが厳密に検討されたようで、電池を入れた状態でバランスするようになっている。
国内では「パナペット」シリーズの一つとして「クルン」の愛称で、輸出向けには「Toot A Loop」の愛称で販売された。国内での販売は振るわなかったようだが、このユニークなデザインは海外で高く評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMa)のパーマネントコレクションに収められている。
当時の広告には「ヨーロッパから来たファッションラジオ」のコピーで、"J.M.Willmin"というデザイナーの名前が紹介されている。しかし、これは松下が宣伝用に作った架空の人物と思われる。この宣伝にも舶来品をありがたがる当時の日本の風潮が見て取れる。
本機は、本来白色であったが、変色している。
(所蔵No.12216)
ナショナル・パナソニック R-70型 "パナペット70" 6石球形ラジオ 松下電器産業(株) 1970年 3,900円
6-Trs, DC9V (006P), BC: 535-1605kHz
球形のユニークな形のラジオ。70年代らしいポップなデザインである。この赤のほかに、青と白、アイボリーがあった。映画「2001年宇宙の旅」(1968年)に登場するスペース・ポッドのデザインをヒントにしたように見える。
キーホルダーのチェーンが付き、カタログには「インテリアにアクセサリーに」とあるが、、直径11㎝, 450g と大きく重く、ぶら下げて歩いたとは思えない。室内で持ち運ぶときに下げるのに便利であるほか、吊り下げて使うこともできた。一見玩具的な商品に見えるが、ケースは極めて頑丈で、しっかり作られている。
このユニークなデザインは日本のインターナショナル工業デザイン(株)の作品である。同社は松下幸之助の指示で1962年に設立された社外デザイン事務所である(2)。
松下電器は1970年に開催された大阪万博に出展していた。この機種には、万博のマークを付けた公式記念モデルが存在する。
(所蔵No.m12018)
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ナショナル・パナソニック R-88型 "パナペット・デート" 万年カレンダー付6石ラジオ 1972年頃
6-Trs, DC3V (SUM-3 X2), BC: 525-1605kHz,
万年カレンダー機能を備えたユニークなラジオ。スピーカーグリルがカレンダーの形に打ち抜かれている。窓に表示される月の数字と、1つずつずらした曜日が印刷されたロールを手動で回転させて曜日を合わせることで万年カレンダーとしている。使えないことはないが、カレンダーとしては見にくい。乾電池専用でストラップも付いているが、真四角で厚みのあるデザインは持ち運びに便利ではない。卓上型として使う製品だろう。
(所蔵No.12292)
ナショナル・パナソニック RF-93型”パナペットえふえむ” 9石FM-AMラジオ 松下電器産業(株) 1973年 6,500円
9-Trs, DC4.5V (SUM-3D X3), BC: 525-1605kHz, FM: 76-90MHz, 6cm P.D.SP.
パナペットシリーズの後期の製品。大きな数字と文字で埋め尽くした70年代らしい大胆なデザインが特徴の小型ラジオ。若者を対象とした製品で、FM付としては安価である。キーチェーンがあり、移動するときに使うほか、吊り下げて使うこともできる。吊るすと涙滴型のフォルムとなる。
カラーバリエーションは、このバイオレットの他に、赤と白があった。輸出用にFMのバンドが88-108MHzのモデルがあり、愛称を"Rolling Tone"といった。販売店向けの資料には「デートやショッピングに、ルームアクセサリとしても最適なナウなデザイン」とあるが、これを外に持ち歩くことはちょっと考えられない。この後石油ショックのために低成長となり、このような大胆なデザインの製品は見られなくなる。
参考資料:ナショナルテクニカルガイド
(所蔵No.12226)
ナショナル・パナソニック RE-190型 6石ホームラジオ 松下電器産業(株) 1967-68年 6,950円
6-Trs. AC100V / DC6V (4-UM-1), BC: 525-1605kc,
松下のホームラジオ。電池とAC兼用で、ハンドルが付いて持ち運びできるデザインではあるが、ACコードを取外せず、収納するには裏蓋を外す必要がある。どちらかといえば据え置き用途を重視した製品である。ソニーの8F-38型に刺激を受けたものと思われるが、こちらは中波専用の安価なモデルである。カタログには「エコノミー派の移動用ラジオ」とある。赤および青色のバリエーションも存在する。
(所蔵No.12152)
ナショナル・パナソニック RC-10型 ”タイミィ10” 6石クロックラジオ 松下電器産業(株) 1968-70年 6,500円
6-Trs, AC100V 50c/s, BC: 525-1605kc
小型で安価な中波専用のクロックラジオ。トランジスタ式でもクロックラジオというと横長の大型の製品が多いが、これは置時計とあまり変わらないパネルサイズのユニークなデザインが特徴である。一般的なクロックラジオ同様アラームとスリープタイマーを備える。机上で見やすいようにパネルが傾いているが、底部の小さな脚を立てるとパネルを垂直にすることができる。
当時はラジオやテレビのパネル表示は国内向けモデルでも英語表記とするのが普通だったが、この製品は愛称が日本語で表示されている。児童が勉強机で使うようシチュエーションを中心に、幅広いユーザを考慮したものと思われる。この赤色のほかに、黒と青色のバリエーションがあった。「タイミィ」は、松下のクロックラジオに共通のブランドで、上級機に大型の「タイミィF」(12,500円)があった。このモデルはロングセラーとなり、1971年に、よりポップなデザインの「タイミィQ」に引き継がれた。
(所蔵No.12198)
ナショナル・パナソニック RE-637型 9石FM-AMホームラジオ 松下電器産業(株) 1972年 7,900円
9-Trs. AC100V、BC: 525-1605kHz, FM: 76-90MHz
ナショナルのホームラジオ。1972年発売のモデルだが、1960年代風の真空管ラジオスタイルのデザインである。この時代、ホームラジオは各社のカタログに載っているが、ハンドルがついた電池でも使えるセミポータブルが多く、AC専用のモデルであってもこのようなデザインはすでに珍しくなっていた。保守的な一部のユーザのために残されたものだろう。地方の販売店が多い松下電器ならではの製品といえる。大きな特徴はないが完成度は高く、音質、感度ともに良い。アイボリー色のバリエーションがある。
(所蔵No.12095)
コロムビア TFC-140型 10石FM-AMホームラジオ 日本コロムビア(株) 1967年頃
10 Trs. DC9V (UM-1 X6) or AC100V、BC: 530-1600kc, FM: 76-90Mc
1960年代後半に流行したテレビやステレオのデザインを取り入れた豪華な木製キャビネットのホームラジオ。乾電池で使うこともできるが、持ち運びできる形状ではなく、AC100Vで使うことを中心に考えられた製品である。16cmの大型スピーカを備え、ピックアップ端子が付いているなど、音質を重視した製品だが、FM
MPXには対応していない。このようなデザインのラジオは、この頃各社から発売されたが、ステレオセットに比べると中途半端で、長続きしなかった。
(所蔵No.12162)
オンキヨー 12LF-200J型 12石FM-AMハイファイホームラジオ 大阪音響(株) 1968年頃
12 Trs. , AC100V 50/60c/s or DC7.5V(UM-1X5), BC:530-1605kHz, FM: 76-90MHz
FM放送の全国への普及に対応して高音質を追求したホームラジオ。オーディオメーカらしい製品である。余裕のある出力2Wのアンプ部を備え、通気口のない裏蓋には吸音材が貼られている。旧来のピックアップ端子だけでなく、テープレコーダの普及に対応してREC
OUT端子が付いている。キャビネットは、ラジオというよりも当時流行していたステレオセットを強く意識したデザインである。
(所蔵No.m12010) 旧ふくやまラヂオ博物館コレクション
パイオニア セパレートラジオ R-200型 ディジタル時計付FM-AM ステレオラジオ パイオニア(株) 1972年頃 39,800円
AC100V 50/60Hz, BC:530-1605kHz, FM: 76-90MHz, 28-Trs. 17-Diodes, 16cm
P.D.SP. X2
ラジオ部とスピーカを分離した本格的なステレオラジオ。16cmスピーカを備え、最大出力5+5W(当時は10Wと表記)である。本体には外部入力とフォノ入力、REC出力があり、レコードプレーヤやテープレコーダを接続できる。この赤色がメインであったが、イエローとアイボリーのカラーバリエーションが用意されていた。
ディジタル時計によるタイマー機能がある。ディジタル時計のない廉価版のR-100型(35,000円)、時計の代わりに8トラデッキを備える上級機R-300型(49,800円)が存在した。鮮やかなプラスチックの立方体で構成されるデザインには、イタリア、ブリオンベガ社の製品の影響がみられる。ステレオセットのサイズは、レコードプレーヤのサイズで制限されるため、小型化に限界があるが、この製品は、ラジオと割り切ったために自由なサイズのコンパクトな製品を実現できたといえる。後のミニコンポにつながる製品である。
(所蔵No.12225)
FUJI TRB-667W型 6石ホームラジオ 富士電機製造(株) 1967年 5,980円
6-Trs. AC100V / DC6V (UM-1A X4), BC: 530-1600kc
中波専用の普及型ホームラジオ、電源はAC100Vと乾電池兼用である。内部の作りは安っぽく、AC100Vの回路にはヒューズもなく、イヤホンの配線と同じ極細の線材が使われるなど、安全面でも疑問の残る設計である。大手メーカに対抗して低コストの製品を作ろうとした結果のように思える。この機種は全く同じ形のものがゼネラル製品にもある。ゼネラルのOEMと思われる。
モータや半導体、電気機器などに高い技術力を持った富士電機だが、家電、特にテレビやラジオでは他社製品と差別化できる付加価値を持った製品を生み出すことはできなかった。同社は戦前の扇風機の生産から撤退して以来途絶えていた家電の製造に1950年代に再進出した。優秀な製品を発売したが販売面で振るわず、1970年代に撤退した。
掲載紙:『電波新聞』1967年12月4日広告
(所蔵No.12171)
シンガー(SINGER) 920 BD 9石2バンド・ホーム・ラジオ Singer Manufacturing Company 1963年頃
Trs: 2SA263 2SA267 2SA31 2SA31 1NA4G 2SB32 2SB32 2SB32 2SB34 X2 (TEN),
DC6V (UM-1A X4), 5X6" Permanent Dunamic Speaker
BC: 550-1600kc, SW: 4-12Mc
ミシンメーカのシンガーが製造したトランジスターラジオ。トランジスタ―ラジオの対米輸出が急増した1960年代前半には多くの異業種からラジオ製造に参入した。ちょうど、ミシン、カメラ、時計など多くの機械製品にトランジスタ制御、自動露出などの電子技術が入っていく時代でもあった。この機種は国内用のモデルのようである。
本機は油汚れがひどい。本来の色はシルバーまたは薄いゴールドであったと思われる。
乾電池のスリーブが失われている。
(所蔵No.12305)
ノベルティラジオ
MARC 地球儀型2バンドスーパー ニューホープ実業(株) (Code 508) 1960年頃
DC9V(UM-3 X6), BC: 535-1605kc, SW: 3.8-12Mc
地球儀型のラジオは、戦前のレイモンド・ローウィがデザインしたものや、戦後の東芝製の真空管式のものが有名だが、これは無名メーカが輸出用として製作したトランジスターラジオである。ラジオの基板は地球儀内部に収められ、スピーカは下向きに取り付けられている。台座には電池ケースが収められ、ロッドアンテナが付いている。この時代の輸出用トランジスターラジオの例にもれず、OEMのブランド名のみで、メーカ名の表示はない。
同じデザインでAMのみのバージョン(NTR-6G型)も存在した。
(参考)
地球儀型ラジオについては、ニューホープ実業(株)と米E.M.スティーブンス・コーポレーションとの間で争われた意匠権をめぐる裁判が有名である。これは、米社のデザインした地球儀型ラジオを日本の会社に製造させたところ、トラブルが起こり契約を解除したが、その後日本の会社が地球儀型ラジオのデザインを意匠登録した。米社は別の日本メーカに製造委託したが、これに対し、意匠登録したニューホープ実業が意匠権侵害として差し止め、損害賠償請求訴訟を提起し、最高裁まで争われた。裁判は最高裁まで争われ、昭和44年に上告棄却の判決が出て、ニューホープ実業側の敗訴となった。
参考文献:
『日本のラジオ』 (工業出版社 1962年)
「地球儀型トランジスタラジオ意匠事件」 昭和41(オ)1360 意匠権侵害排除、損害賠償請求 意匠権 民事訴訟
(所蔵No.12213)
NHKホール・モデル 7石スーパー 松下電器産業株式会社 日本放送協会 1973年
7-Trs. , DC6V (UM-3 X4), BC: 535-1605kHz
1972年に完成し、1973年から運用された東京、渋谷のNHKホールの形をしたラジオ。木製の台の上にアルミ鋳物でできたホールの模型が載っている。落成記念に作られたものと思われる。底蓋にはNHKのマークがあるが、記念の文字などはない。メーカの表示は本体にはないが、別の資料から松下電器製であることが確認されている。
(所蔵No.12046)
(1)ソニー創立50年記念誌「GENRYU源流」 1996年 ソニー(株)広報センター
(2)増成和敏 「インターナショナルエ業デザイン株式会社の設立経緯と成果」 『テザイン学研究 』 Vol 58 No,3 (日本デザイン学会 2011年)