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戦時中の普及型受信機
ここでは第2次大戦中の受信機のうち、放送局型受信機以外の、いわゆる「国策型受信機」と呼ばれる普及型のセットを紹介する。
高周波増幅付の受信機は「戦時中の中級受信機」に紹介。
太字は最新の更新を示す
一級品メーカ
コンサートン(Concertone)製品 タイガー電機(株)
組合型5号受信機 (4球) 1938年
コンサートン CS-4型 (4球) 1938年
シャープ(Sharp)製品 早川金属工業(株)
シャープ K-1号型 (4球) 1939年
シャープ K-10号型 (4球) 1939年
シャープ 特選四球 (4球) 1939年頃
シャープ 新国策2号型 (4球) 1939年
シャープ 普及10号 (4球) 1939年頃
シャープ 標準10号 (4球) 1943年 公定価格51.80円
ナショナル(National)製品 松下無線(株)
ナショナル 特選受信機 (4球) 1939年
ナショナル 国策1号型KS-1型 (4球) 1939年 26.00円
ナショナル 特選三球 (3球) 1939年
ナショナル SB-25型 (4球) 1940年
ナショナル 4D-1型 (4球ダイナミック) 1940年
ナショナル NA-4型 (4球) 1940年
ナショナル 特選四球受信機 (4球) 1941年
ナショナル R4-M型 (4球) 1942年頃
ナショナル 特選受信機 (4球) 1942年頃
ナナオラ(Nanaola)製品 七欧無線電気(株)
ナナオラ 国策2号型 (4球) 1940年頃
ナナオラ N-2号E型 (4球) 1941年
テレビアン(Televian)製品 山中電機(株)
テレビアン ED-3型 (3球) 1940年頃
東芝製品 東京芝浦電気(株)
東芝受信機41型 トランスレス (3球) 1940-41年 (別ファイルへリンク)
東芝受信機51型 トランスレス高一 (4球) 1940-41年 (別ファイルへリンク)
キャラバン(Caravan)製品 原口無線電機(株)
キャラバン M-400型 (4球) 1939年
キャラバン 型番不明 (4球) 1940年頃
キャラバン R-800型 (4球) 1940年
アリア(Aria)製品 ミタカ電機(株)
アリア 型番不明 (4球) 1940年頃
アリア M-57型 (4球) 1942-43年 公39.20円(NEW)
オーダ(OHDA)製品 白山無線電機(株)
オーダ 報国A-1号受信機 (4球) 1941-42年 36.60円
コロムビア(Columbia)製品 (株)日本蓄音機商会
コロムビア CR-140型 3球ダイナミック 1940年
クラウン(Crown)製品 日本精器(株)
クラウン 国策1号受信機 (4球) 日本精器(株) 1939年
クラウン K-30号受信機 (4球) 日本精器(株) 1940年頃
興亜/精華製品 (有)興亜無線電機製作所
興亜/精華受信機 (4球) 1939年頃
二葉/双葉製品 二葉電機(株)/双葉電機(株)
二葉(Futaba) 型番不明 (4球) 二葉電機(株) 1941年
双葉(Futaba) 型番不明 (4球) 双葉電機(株) 1941年頃
ハッピー(HAPPY)製品 志村無線工業所
ハッピー A-75型 (4球) 1941年
ビオン(Bion)製品 瀧澤無線電機工業(株)
ビオン(Bion) 4M-1型 (4球) 1941年 公33.00円
ヘルメス(Hermes)製品 大阪無線(株)
ヘルメス(Hermes) Z-2型 (4球) 1939年
ヘルメス(Hermes) S-5型 (4球) 1942-43年 公36.60円
ヘルメス(Hermes) M-5型 (4球) 1944年
二級品メーカ
ダーリング(Daring)受信機 型番不明 (4球) 大東無線電機製作所 1941年頃
WONDER 型番不明 (4球) Shirae Radio Works 1941年頃
MAYBE受信機 型番不明 (4球) Tomoe Electro. Eng. Co. Ltd. 1941年頃
THUNDER受信機 型番不明 (4球) 富久商会 1941年頃
再生式受信機(一級品)
組合型5号受信機 (4球) タイガー電機(株) 1938年 27.00円
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
並四球受信機。コンサートンCS-4型受信機と基本的に同じものである。大阪ラヂオ小売商業組合が1938年12月に同年5月に発足した同組合の記念事業として年末、正月商戦用の目玉商品として1000台限定で用意されたもの。セットは同組合が大阪ラヂオ工業組合を通じて発注し、共同購入したという。
(この解説は曾崎重之氏の「オール電気」紙掲載の記事を参考にさせていただきました)
本機には紙フレームのマグネチックが使われているが、この時代にはまだ開発されていないため、後に交換されたと考えられる。
(所蔵No.11478)
コンサートン CS-4型 (4球) タイガー電機(株) 1938年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
大阪の中堅メーカ、タイガー電機(株)の並四受信機。デザインが簡素になり、シールドケースが鉄製になるなど、資材節約の影響が一部に見られるが、まだ余裕のあるつくりである。
(所蔵No.11256)
シャープ K-1号型 (4球) 1939年
裏蓋の銘板(左) とキャビネットの底の回路図(右)
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
国策型受信機の初期のものと考えられる機種。フィラメント電圧がすべて異なる57-26B-12Aの3本について、5V巻線に1.5Vと2.5Vのタップを出すことで対処している。シャーシ背面のアンテナ端子の横には半固定のスイッチがあり、音質調整としている。後の国策型受信機に近いものだが、キャビネットのデザインや電源トランスは簡素化しているものの、シャーシも大きく、高周波チョークや低周波トランスを使用しているなど、まだ資材節約を徹底していない設計である。このK-1号が国策1号と考えがちだが、実際のシャープの国策1号はK-10号型のデザイン違いのモデルである。
(所蔵No.11A349)
シャープ K-10号型 (4球) 早川金属工業(株) 1939年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
シャープの国策型受信機の初期のもの。並四受信機である。フィラメント電圧がすべて異なる57-26B-12Aの3本について、5V巻線に1.5Vと2.5Vのタップを出すことで対処している。トランスを小型化し、シャーシ内部に収納することでシャーシ全体を小型化している。ダイヤル下側の矢形ツマミは、アンテナコイル一次側のタップを切り替えるものである。通常はアンテナ端子を差し替えることで行うが、前面から操作できるものは珍しい。スピーカのグリルが異なる「国策1号型」が存在する。
掲載誌:無線と実験 1939.9
(所蔵No.11428)
シャープ 特選四球 (4球) 早川金属工業(株) 1939年頃
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
国策型受信機の代表例。並四受信機である。新国策2号型のデザイン違いである。商流の違いにより用意されたモデルと考えられる。フィラメント電圧がすべて異なる57-26B-12Aの3本について、5V巻線に1.5Vと2.5Vのタップを出すことで対処している。トランスを小型化し、シャーシ内部に収納することでシャーシ全体を小型化している。ダイヤル下側の矢形ツマミは、アンテナコイル一次側のタップを切り替えるものである。通常はアンテナ端子を差し替えることで行うが、前面から操作できるものは珍しい。
本機は26Bおよびスピーカが失われている。また、ツマミが失われていたので、新国策2号から作成したレプリカを取り付けた。ツマミの形が違っていた可能性もある。
(所蔵No.11799)
シャープ 新国策2号型 (4球) 早川金属工業(株) 1939年
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
シャープの国策型受信機の代表的なもの。規格品の並四受信機である。トランスを小型化し、シャーシ内部に収納することでシャーシ全体を小型化している。上の特選四球型とダイヤル、シャーシの構造が共通であることがわかる。ダイヤルなどのシャフトが丸棒の削り出しでなく、板を丸めたパイプで作られている。
本機はスピーカーが破損していたため、交換してある。
(所蔵No.11377)
シャープ 普及10号 (4球) 早川金属工業(株) 1940年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
シャープの国策型受信機の代表的なもの。旧型の26Bに代わって56を採用した規格品の並四受信機である。ダイヤルエスカッションやツマミなどの細部を除いて松下のナショナル特選四球受信機とまったく同じものであることがわかる。部品などの特徴から、松下のOEMと思われる。資材節約のため、紙製フレームのスピーカが採用されている。
(所蔵No.11528)
シャープ 標準10号 (4球) 早川電機工業(株) 1943年 公定価格51.80円
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
大戦末期に作られたシャープの普及型受信機。57-56-12A-12F の規格品の並四受信機。簡素なデザインと小型化したシャーシ、紙フレームのマグネチックと、資材節約型になっている。
本機は、スピーカーグリルの桟が1本失われている。
(所蔵No.11017)
興亜/精華受信機 型番不明 (4球) (有)興亜無線電機製作所 1939年頃
SeikwaとKoaが並ぶキャビネットのマーク、ダイヤルは「Seikwa」のみ
TUBES: 57 26B 12A 12F, Magnetic Speaker
蓄音器メーカからラジオに転じたばかりの八欧商店のメーカ部門、興亜無線電機製作所の普及型セット。従来のブランド「精華(Seikwa)」と新しい「Koa」が混在している。スピーカのフレームはまだ紙製ではないが、金属の使用を最小限にする構造になっている。
本機の低周波増幅初段は本来26Bだったが、56に改造されている。また、真空管が昭和30年頃のナショナル製に交換されているなど、かなり後まで使用された形跡がある。全体に油汚れがひどく、アンテナコイルがなぜか固定されていない。
(所蔵No.11988)
ヘルメス(Hermes) Z-2型 (4球) 大阪無線(株) 1939年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
大阪の高級受信機メーカ、大阪無線の国策型受信機。57-26B-12A-12Fの並四受信機。鉄フレームのマグネチックスピーカを使用している。
キャビネットに貼られた受信契約通知書から1953年以降も使用されたことがわかる。真空管、コンデンサ、スピーカのコイルなど、消耗しやすい部品を交換しながらオリジナルの回路のままで使われていた。
(所蔵No.11438)
ナショナル特選受信機 (4球) 松下無線(株) 1939年
24B-26B-12A-12F の並四受信機。大型のシャーシにチョークコイルを使用している点など、まだ資材節約が徹底されていない。まだ金属フレームのマグネチックが使われている。国策型受信機になる直前のセットである。
(所蔵No.11389)
ナショナル(National)国策1号型KS-1型 (4球) 松下無線(株) 1939年 26.00円
(左)銘板のカバー裏がヒューズホルダになっている (右)裏蓋に貼ってあるラベル
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
「国策」の名前をつけた初期のセット。並四球で、普通より小さい6インチのマグネチックを駆動する。チョークコイルと、低周波トランスをすべて抵抗に置き換えた、資材節約型の回路を実現した初期のもの。 抵抗結合にすることでシャーシを小型にすることができた。これを表現するためにこのセットは普通の並四球受信機より一回り小さいキャビネットに小型のシャーシを収めている。これが、いわゆる「国策型受信機」の最初のものと思われる。
このデザインとダイヤル機構は評判になり、模倣品が出回ったらしい。裏蓋には意匠登録出願中のラベルが貼ってある。小型化と大量生産によりこの機種は当時の平均的な並四の価格の30円台を大幅に下回る26円の定価で発売予告された。しかし、同業他社からダンピングを疑われ、問題視されたため、本来1938年末に発売されるはずだったのが翌年初頭に延期された。1940年以降、部品の標準化により、8インチのマグネチックに合わせたキャビネットにサイズが統一されたため、このような特別小型化したセットは作られなくなった。
(所蔵No.11777)
ナショナル(National)特選三球 (3球) 松下無線(株) 1939年
TUBES: 57 12A 12F (改造後UZ-57A UY-56 UX-12AK KX-12F), BC:550-1500kc, Magnetic
Speaker
国策1号型と同じサイズの小型キャビネットに収められた3球受信機。通常3球受信機は5極管47Bを用いて抵抗結合とすることが多いが、この機種では3極管12A
を採用してトランス結合としている。当然、感度は低下するが、コストは安く抑えられる。結局、低感度を改善するためにUY-56を追加して並四球に改造している。
(所蔵No.11978)
ナショナル SB-25型 (4球) 松下無線(株) 1940年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
ナショナルの並四受信機。57-26B-12A-12Fという国策型受信機の標準的な配列。26Bはフィラメント電圧が特殊なことから推奨されなかったが安く流通していたために使われることが多かった。全面的な抵抗結合の採用、小型のトランス、紙フレームのスピーカ、簡素なデザインなど、国策型受信機の特徴が良く出ている。
(所蔵No.11567)
ナショナル 4D-1型 (4球ダイナミック) 松下無線(株) 1940年
TUBES: 57-56-47B-12F, Magnetic Speaker
並四球受信機でありながらダイナミックスピーカを備えるという珍しい受信機。小型ではあるがダイナミックを駆動するため出力管が並四の12Aではなく47Bが使われ、57-56-47B-12Fという配列である。スピーカは自社製の小型フィールド型ダイナミックD-50型である。このセットは規格品ではない。規格品のダイナミックセットは高一付以上となる。松下の代表的なものとしてR-4D型がある。このセットは、音質のよさを強調して「ナショナル・トーン」と称して宣伝された。感度が低くても音質を求めるという都会向けの需要が戦時下にあっても存在したということだろうか。デザインやサイズはマグネチックのセットと変わりなく、高級品らしさはない。
(所蔵No.11646)
ナショナル NA-4型 (4球) 松下無線(株) 1940年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
ナショナルの並四受信機。国策型受信機の標準的な配列である。26Bはフィラメント電圧が特殊なことから推奨されなかったが安く流通していたために使われることが多かった。全面的な抵抗結合の採用、小型のトランス、紙フレームのスピーカ、簡素なデザインなど、国策型受信機の特徴が良く出ている。
本機は、オリジナルの状態がよく保たれている。
(所蔵No.11310)
ナショナル 特選四球受信機 (4球) 松下無線(株) 1941年
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
松下の国策型受信機の代表的なもの。標準的な並四球受信機で、自社製紙フレームマグネチック(放21108:PM-200E、1941.6.30認定)を駆動する。また、このセットのキャビネットを利用して、有放2号型受信機が試作された。この機種のOEM品と思われるシャープ普及10号受信機が確認されている。
本機のツマミはオリジナルではない。また、南洋材を使ったこの時代のキャビネットは虫食いがひどいものが多いが、これもその例に漏れない。
(所蔵No.11636)
ナショナル(National) R4-M型 (4球) 松下無線(株) 1942年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
松下の戦時下に即した製品。バリコンの代りにμ同調が採用され、シャーシがベークライト板でできていて、ソケットはシャーシと一体となっている。ドイツ国民受信機DKE1938風の小型キャビネットを同社は「ミドルキャビネット」と呼んだ。トランスレスではないが、極限まで物資を節約している。
本機は、最近修理された痕跡がある。
(所蔵No.11744)
ナショナル特選受信機 松下無線(株) 1942年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
ドイツ国民受信機DKE1938のスタイルを真似た資材節約型のセット。R-4Mのバリエーションモデルと思われる。回路は57-56-12A-12F の並四球である。シャーシとなるのは1枚のベークライト板で、ソケットはこの板に直接穴あけおよび端子が取り付けられている。また、開発されたばかりの紙製フレームのマグネチックを採用している。
本機は、ツマミが失われていたため、類似した形状のレプリカを取り付けた。
(所蔵No.11772)
ナナオラ 国策2号型 (4球) 1940年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
戦前期の大手メーカ、ナナオラの国策型受信機。標準的な並四球でマグネチックを駆動する。N-2号とシャーシが共通である。国策2号型には、キャビネットが違うものが確認されている。このモデルは後期型と思われ、スピーカーグリルのデザインが簡略化されている。
(所蔵No.11A275)
ナナオラ(Nanaola) N-2号E型 (4球) 七欧無線電気(株) 1941年, 公定価格36.60円
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
戦前期の大手メーカ、ナナオラの普及型受信機。標準的な並四球で紙フレームのマグネチックを駆動する。本体には表示がないが、広告には、N-2号Eとなっている。キャビネット違いでN-2号Cが存在した。国策2号型のモデルチェンジと考えられ、デザインがより簡略化されている。
終戦直後に出力管が6ZP1に改造されている。
参考文献:伊藤商報 第179号 1941.6 伊藤ラヂオ商会
(所蔵No.11907)
テレビアン(Televian) ED-3型 (3球) 山中電機(株) 1940年頃 28.85円(日本放送協会報351号より)
底板に貼られた回路図
TUBES: 56 12A 12F, Magnetic Speaker (金属フレーム), BC: 550-1500kc
当時最も安価な構成のセット。三極管検波、三極管増幅の3球再生式受信機は、ミゼットラジオ時代の過去の遺物であったが、放送局の大電力化により、都会向けの低価格受信機として復活した。古いセットとは異なり、チョーク結合とされて簡素化されている。感度が低く(弱電界級)、放送局の近くでないと実用にならないため、絶対数は少ない。1940(昭和15)年に制定された標準品には57-12A-12Fの3球式が選ばれ、この形式は標準外とされた。
本機の検波管は、旧式の27Aが使われている。時代は合っているが、オリジナルではないだろう。
(所蔵No.11A003)
キャラバン(Caravan) M-400型 (4球) 原口無線電機(株) 1939年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker (Metal Framed)
中堅メーカ、原口無線電機の並四受信機。金属フレームのマグネチックを駆動する。初期の国策型受信機で、キャビネットを小型にするため57を沈めて取り付け、スピーカと干渉するためトランスをシャーシ側面に取り付けている。この種の受信機としては珍しくピックアップ端子がある。シャーシ背面には多色刷りの説明が印刷され、使いやすさに配慮されている。また、この紙の後ろから見て右半分のシャーシは、鉄板が省略されていて、資材節約を図っている。
このセットはアンテナコイル2次側から「マジックコード」と称する4mの電線が引き出されていて、この電線を延ばせば、外部にアンテナ、アースを接続しなくても受信できるようになってる。また、アンテナコイルは昔ながらのスパイダーコイルがシャーシ下に取り付けられている。これは原口無線のセットの特徴でもある。
掲載誌:無線と実験 1939.10
(個人蔵)
キャラバン 型番不明 (4球) 原口無線電機(株) 1940年頃
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
中堅メーカ、原口無線電機の並四受信機。再生、同調ともマイカで絶縁したシールド型のバリコンを使用している。また、アンテナコイルは昔ながらのスパイダーコイルがシャーシ下に取り付けられ、シャーシの小型化に貢献している。
本機は、57の代わりに58が使われている。裏蓋が失われているため、型番不明である。
(所蔵No.11195)
キャラバン R-800型 (4球) 原口無線電機(株) 1940年
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
上のキャラバン受信機と共通のシャーシを持つキャラバンの並四受信機。旧式な26Bを56に変更して性能を改善した並4球受信機。
国策型受信機の典型的なもの。
本機はダイヤル右側の装飾が欠落している。
(所蔵No.11449)
アリア 型番不明 (4球) ミタカ電機(株) 1940年頃
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
戦前期の大手メーカー、ミタカ電機の並四受信機。57-26B-12A-12F の構成で金属フレームのマグネチックを駆動する。キャビネットは直線的だがダイヤルは曲線的なデザインのまま。
本機は銘板が失われているため型番は不明である。
(所蔵No.11390)
アリア M-57型 (4球) 1942-43年 ミタカ電機(株) 公39.20円
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
一級品メーカのミタカ電機が、1942年末に発売した普及型ラジオ。戦況が悪化し始めた頃の新製品であった。先に紹介したモデルと比較すると、シャーシが小型化されていることがわかる。この時期、すでに紙製フレームのスピーカが実用化されていたが、本機には金属製フレームのものが使われている。オリジナルか、修理で交換したものかは不明である。
本機は塗装の劣化がみられる。同調ツマミはオリジナルではない。
掲載誌:川松商報 昭和18年1月
(委託No.S11137) 柴山 勉コレクション
オーダ(OHDA) 報国A-1号受信機 白山無線電機(株) 1941-42年 36.60円
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
電池式受信機で知られる白山無線電機の並四球受信機。放送局型11号に似たデザイン。ラジオ用品委員会で共通化された部品が使われて資材が節約されているが、低周波の段間には抵抗結合ではなく、トランスが使われている。
(所蔵No.11567)
コロムビア(Columbia) CR-140型 3球再生式ダイナミック受信機 (株)日本蓄音機商会 1940年
57-47B-12Fの3ペンでありながら小型ダイナミックスピーカを搭載する異色の受信機。3球受信機としては大型で、高級機メーカーとしてのこだわりが感じられる。感度が低いため、高音質を求める都会の顧客向けであろう。高級感を演出する横行ダイヤルは減速機構がなく、実用的にはまったく意味がない。従来アルミであった銘板は紙製になっている。
(所蔵No.11551)
クラウン 国策1号受信機 4球再生式 日本精器(株) 1939年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
放送局型受信機の開発で知られる日本精器の並四球受信機。57-26B-12A-12F の抵抗結合回路で、鉄製フレームマグネチックを駆動する。セルロイドを使用した薄型のバリコンを使い、シャーシを小型にまとめている。国策型といってもデザインはスマートな個性的なもので、まだ余裕がうかがえる。
(掲載誌:無線と実験 1939.10)
(所蔵No.11543)
クラウン K-30号受信機 (並四球) 日本精器(株) 1940年頃
(初期型)
(後期型)
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
放送局型受信機の開発で知られる日本精器の並四球受信機。局型123号とデザインのモチーフが似ている。規格品のため公定価格のステッカが貼ってある。このモデルには2種類のデザインが確認されている。初期型のスピーカーはまだ鉄製フレームで、銘板もアルミ製だが、後期型では紙製フレームと樹脂製の銘板に変更されている。また、キャビネットも局型123号同様、角が丸い形から平面的なものに変更され、スピーカグリルの飾りも省略された。戦時中のラジオならではの変化といえる。
後期型のスピーカーグリルは金網が使われている。もちろんオリジナルではなく、ネズミの被害にでもあって交換したのだろう。ツマミは戦後のものに交換されていたので、初期型と似たものに交換した。
(初期型:所蔵No.11543)(後期型:No.m11169 長野市 草間様寄贈)
二葉 型番不明 (4球) 二葉電機(株) 1941年
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
大阪の中堅メーカー、二葉電機の並四級受信機。シンプルなキャビネットに紙フレームのマグネチック(放21096,オリオン58号,1940..3.31認定)を使う国策型受信機の典型である。
本機はラベル類が失われているため型番などは不明である。ツマミの名称を示す紙が残っているのが珍しい。この方式は昭和30年代まで行われた。キャビ内部に追加されたオイルコンデンサは戦後の修理によるもの。
(所蔵No.11352)
フタバ 型番不明 (4球) 双葉電機(株) 1941年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
大阪の中堅メーカー、双葉電機の並四級受信機。同社は1940年に二葉電機から当時の人気力士、双葉山にちなんで社名変更された。シンプルなキャビネットに紙フレームのマグネチックを使う国策型受信機の典型である。
本機はラベル類が失われているため型番などは不明である。
(所蔵No.11394)
ハッピー(HAPPY) A-75型 (4球) 志村無線工業所 1941年
TUBES: 57-26B-12A-12F, Magnetic Speaker
東京の中堅メーカ、志村無線の並四球受信機。この大型円形ダイヤルは松下が使い始めて流行した。同社はこの頃、放送局型製造事業者の資格を取るべく努力していたが、実現しなかった。志村無線電機(株)は電子部品商社として存続している。創業者、志村義雄は1967年から89年まで秋葉原電気街振興会会長を務めた。
本機のダイヤル部のツマミおよびスピーカはオリジナルではないと思われる。このセットはごく最近修理されている。
(所蔵No.11779)
ビオン 4M-1型 (4球) 瀧澤無線電機工業(株) 1941-43年 公33.00円
ビオンのロゴ
(左)東北配電若松支所(福島)の承認印がある (右)底板に蓋があり、点検できるようになっている
底に貼ってある回路図、手書き風なのがおもしろい
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
ポータブルラジオで有名な中堅メーカーの並四受信機。57-56-12A-12F の標準的なもの。同社は1943年にオーダ受信機の白山無線電機と合併し、帝国電波(現クラリオン)となる。底板に点検口があって容易に修理できる特長があった。
本機はダイヤルの飾り板が片側失われている。また、真空管が失われていたため、手持ちのものを取り付けた。
(所蔵No.11387,11687)
ヘルメス(Hermes) S-5型 (4球) 大阪無線(株) 1942-43年 公36.60円
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
高級受信機メーカの大阪無線が戦時中に生産した小型受信機。規格品の並四受信機。紙フレームのマグネチック(KDY130,大阪工業所1942.2認定、放21155)を使用。規格品の受信機である。箱型のシャーシでなく、平板を曲げた鉄板がキャビネットの枠に乗る形になっている。戦時下の受信機は局型受信機風の平凡なデザインが多い中、ユニークなデザインで資材節約型受信機を実現したところは、高級受信機でつちかった同社のセンスが生きている。
(所蔵No.11413)
ヘルメス(Hermes) M-5型 (4球) 大阪無線(株) 1944年
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
S-5型受信機をマイナーチェンジした小型受信機。規格品の並四受信機。紙フレームのマグネチックを使用。S-5型と同じ平板を曲げた鉄板がキャビネットの枠に乗る形になっている。デザインは平凡なものに変更され、細部が簡略化されている。戦局の悪化に伴ってラジオ生産は激減していった。このセットは戦時下のセットとしてもかなり末期のものといえる。
(所蔵No.11621)
再生式受信機(二級品)
ダーリング(Daring)受信機 型番不明 (4球) 大東無線電機製作所 1941年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker
中小メーカーの規格品の並四受信機。規模の小さな会社(指定された一級品業者以外)は二級品とされ、低い公定価格が適用された。
本機はツマミ2個および裏蓋が失われている
(所蔵No.11566)
WONDER 型番不明 (4球) Shirae Radio Works 1941年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
国策型受信機は大手メーカー製品ばかりではない。このような無名メーカーのセットもたくさんあった。標準的な並四受信機である。
本機はキャビネットのダイヤル脇部分が破損している。
(所蔵No.11433)
MAYBE受信機 77型 (4球) Tomoe Electro. Eng. Co. Ltd. 1941年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
無名メーカの並四球受信機。裏蓋に青色の規格品ラベルがある。大メーカの製品は赤色のラベルである。一級品メーカが赤、二級品メーカが青ということなのかもしれない。それにしてもMAYBE(たぶん、もしかしたら)とはどういうセンスのブランドなのだろうか。
本機は1950年代まで修理されて使用された形跡がある。
(所蔵No.m11061) 松本市、手塚様寄贈
サンダー(THUNDER)受信機 型番不明 (4球) 富久商会 1941年頃
TUBES: 57-56-12A-12F, Magnetic Speaker (Paper Framed)
大手ラジオ卸の富久商会のラジオ。富久のサンダーブランドだが、シャーシは上のMAYBE受信機と同じもので、ダイヤルにはMAYBEのロゴが付いている。MAYBEがオリジナルで、これは富久商会向けのOEM製品と思われる。サンダーは歴史のある有名ブランドだが、一級品メーカではないので二級品となる。